TOP > テレビ業界志望者(とくに女子)必読の書!!『オンエ...

ギャグだけどリアルすぎるADの生態… 

 こんなタイトルを掲げておきながら、いまどきテレビ業界に就職を希望する若者がそれほどいるのかどうか、ちょっと自信がない。でも責任をもっていえる。もしテレビ局に入りたいなら、そして番組の制作をしたいと思っているなら、この本を一冊読むことは、へたなOB訪問をする10倍は参考になる、そして役に立つだろうと。

 なぜこんなに断定的に言えるかというと、私自身が、かつて著者の真船佳奈さんと同じ東京はじっこTV…というか、テレビ東京制作局に属するADだったからだ。私がADだったのは10年前だが、本書を読む限り、びっくりするくらい状況は変わっていないようである。本書のなかのエピソードをいくつか抜粋して紹介したい。

 ・けっこうな確率でやったことがムダになる。たとえそれがドングリを600個集めるような大仕事だったとしても。(#1 ADはつらいよ より)

 ・演者でもないのに、着ぐるみを着て出演させられ、しかもプロレベルの動きを求められてキレられる。(#2 新人さんいらっしゃい)

 ・いつでもインサート撮影で手を使える様に、ネイルのオシャレは基本禁止。(#5着ルナンデス!)

 ・動画にモザイク処理をかけるのはすごく時間がかかる。たとえば男性の局部とか。(#7靄をかける少女)

 これらは、涙が出そうなくらい、かつて私が経験したことと同じである…。私も全身タイツを着てテレビに出演したことがあるし、テレ東にいる間中、素づめで過ごしたし、そして気の遠くなるようなモザイクかけ作業に苦しんだ。

 女性が少ない職場でちやほやされるなんてもってのほか、タレントや女優など「日常的に美人と接する男性たちから姫扱いなど夢の夢」(#9 YOUは何しに合コンへ?)。だから出会いを求めて合コンにも行きたいんだけど、少しでも暇そうにしていれば新しい業務が降ってくるのがADという仕事。さて、先輩に業務を言い渡される前にすっと退社する方法とは…!? ここから先はぜひ本書を買ってお確かめください。ほかにも、レビューで取り上げるのを躊躇ったギリギリなエピソードが満載です。

過酷な仕事のごほうび

 もちろん悪いことだけではない。信じられないほど沢山の人が観ているテレビを作っているからこその手ごたえもある。そうじゃなきゃこんな大変な仕事は続けられない。

 本書では、「#11 プロフェッショナル?? ADの流儀」の中で、真船さんが「一生この仕事 続けたいな」と強く思ったという、あるおばあちゃんとの出会いが描かれている。感動的なエピソードで、それはたしかに彼女がテレビの仕事をしていたからこそ、成し遂げられたことだった。

 テレビ局勤めは高給だし、安定もしているし、まぁまぁ華やか。でもそれは一面的で、番組制作の現場は肉体的にはやっぱり過酷である。そんな状況で、ブツブツ文句をいいながらも、敢えて制作部門で働きぬこうと思うのは、心底仕事を愛している人たちだけだ。思えば私がテレ東退社を決めたのも、周囲の人の真剣みに触れ、自分がそこにいることを申し訳なく思ったからだった。先輩たちを見て、自分も本当にやりたい仕事に就こうと思った。

 過酷だけど、そして変な人だらけだけど、制作の現場はまっすぐに仕事を愛する人たちに出会える、貴重な職場でもある。

悲劇の後始末

 世間知らずの女子大生がプロのADになる。それは並大抵のことではない。本書のなかで、面白おかしく描かれたエピソードの、もとになった実際の事件(?)が起きていたとき、そのうちの何度か、真船さんは深刻な顔をしていたはずだ。もしかしたら、涙したこともあったかもしれない…いやないか。しかしその自分の悲劇を、彼女は少し引いたところから撮りなおすことで、見事に喜劇にした。これは、残酷な世界を生き抜く上での、高等テクニックといえるのでは?

    Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.(人生はクローズアップで見れば悲劇 ロングショットで見れば喜劇。)

 これは言わずとしれた、チャップリンの言葉だ。真船さんの漫画の魅力は、この言葉のとおりだと思う。

 もちろん、「はじっこ」とはいえ真船さんは東京キー局に属するADなので、多くの制作会社に属するないしはフリーのADさんと比較し、恵まれた環境にいることは否めない。けれど、自分の身におきた悲劇を、エンターテインメントに作り変えてしまったその根性に、私はただ、拍手を送りたい。

オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます (ソノラマ+コミックス)
著者:真船 佳奈
出版社:朝日新聞出版
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