TOP > マンガ新聞レビュー部 > 能は時代の最先端 憧れはいつも成田美名子からやって...

※この記事は2016年7月12日にマンガHONZ(運営:株式会社マンガ新聞)にて掲載した記事の転載になります。
レビュアー:佐藤 茜

花よりも花の如く (1) (花とゆめCOMICS)
作者:成田 美名子
出版社:白泉社
発売日:2003-07-05
  • Amazon
  • Amazon Kindle

成田美名子が能がテーマのマンガを描いていると聞いて、最初はとても不思議に思った。しかし読み進めるうちに、不思議に思った私が馬鹿だったことを実感した。

成田美名子は、日本の少女マンガシーンにおいて、現代的なアメリカ生活をマンガで表現した人の一人だ。それまでは、『ベルサイユのばら』のような貴族的な豪奢な暮らしか、『キャンディ♥キャンディ』的な一昔前の暮らしを描いたものが主だったように思う(違ったらすみません。でも個人的に出会ったのは成田作品が初めってだった)。

そんな中、颯爽と現れたのが1980年に発表された『エイリアン通り(ストリート)』。現代アメリカを舞台に、登場人物は全員在米外国人という設定で世間を席巻し(今見ても斬新だ)、住友生命のテレビコマーシャルにも採用された。そして続く『CIPHER』(サイファ)、『ALEXANDRITE』(アレクサンドライト)でも、リアルなアメリカの高校生、大学生の学生生活を描き、インターネットがまだ一般的ではない情報に飢えている時代の少女たちのアメリカへの憧れを一層膨らませた。キャラクター達の服装もマンガにありがちな無限大ワードローブではなく、着回しコーディネートがされており、それがまた一層オシャレでリアルで、もうメロメロだった。『ALEXANDRITE』のヒロイン・アンブローシアが着たデザイナーズの1点もののドレスを何度スケッチしたか知れない(後ろがくるみボタンでね…)。

そのように、長い事アメリカを舞台にしたマンガを描いていたのだが、その次の作品『NATURAL』(ナチュラル)の舞台は日本だ。しかしそこはさすが成田美名子というべきか、主人公はペルー出身という変化球だった(他にペルー出身の主人公がいるマンガがあったら教えてください)。もちろん、この作品もいわゆるありがちな青春物語の枠には収まらずに、それでも読者の心は離さずに描ききられた。全11巻(実はここでもすでに日本文化的な要素は詰め込まれていた)。

そして本作は『NATURAL』からのスピンオフ。主人公は、能楽師・榊原憲人だ。もちろん、物語の中でも、能が多数描かれている。

しかしなぜ能なのだろうか。あんなにずっと外国人をメインに据えてきたのに、ここにきて能。なぜ…なぜ…なぜなんですか先生…と思ったのも本当だ。しかしそれは、必然だ。

昔は、アメリカの情報なんて入って来なかったが、今ではSNSを使って、それこそ今現在何が流行しているか、写真や動画付きで知る事ができるようになった(ポケモンGOが米国で大ヒットして、色々な人がウロウロしてる写真とか見ると平和を感じてよいですね)。

それに比べて、日本の古典芸能の情報は、あまりにも入ってこない。今、能の演目をすらすら言える人が何人いるだろうか。検索しようにも演目名が出てこない(私のことです)。しかしながら世の中の国際化は更に加速し、外国人旅行客は増加、政府も推進している(2015年の訪日旅客数は1,974万人と、2020年に2,000万人としている政府目標が前倒しで達成される勢いとなり、政府は今年3月に2020年の目標を倍増の4,000万人にした)。東京オリンピックのときにはそりゃぁもう、外国の方がわんさかいらっしゃるだろう。

だが、増える外国の方から日本の文化について訪ねられたときに、果たしてうまく答えられるのだろうか。そう考えると、国際化の波に載るには、まず自国文化のことを知る必要があるのだ(英語の問題はさておき)。つまり今の最先端は、自国の文化を知る事にある。そういったことをふまえると、常に時代を先取りしてきた作者が能という日本を代表する古典芸能を選んだのは、ごく自然なことなのだろう(漫画家としてのスタートとほぼ同時に能に触れたそうだが、マンガのテーマに据えられたのは後年であるというのは、時代に本作が求められたのではないだろうか)。

憧れのアメリカ文化から、今は日本の文化でときめかせてくれている作者は、来年2017年でデビュー40周年を迎える。こんなにも長い間、第一線で、読むたびに発見を与えてくれる作品を発表しているのというのは、驚きを禁じ得ない。

先生、長生きしてください…。

来るべき国際社会へ向けての一冊。
もちろん、面白さは成田ブランドなのでお墨付き。

オススメです。 

エイリアン通り(ストリート) (第1巻) (白泉社文庫)
作者:成田 美名子
出版社:白泉社
発売日:1995-12
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愛蔵版 CIPHER 1 (花とゆめCOMICS)
作者:成田美名子
出版社:白泉社
発売日:2013-08-05
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Alexandrite (第1巻) (白泉社文庫)
作者:成田 美名子
出版社:白泉社
発売日:2000-06
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  • Amazon Kindle

 

 

NATURAL (第1巻) (白泉社文庫)
作者:成田 美名子
出版社:白泉社
発売日:2003-09
  • Amazon
  • Amazon Kindle

 

ぴんとこな 1 (Cheeseフラワーコミックス)
作者:嶋木 あこ
出版社:小学館
発売日:2010-02-26
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 こちらは歌舞伎。ドラマ化もされた。
このシリーズは物語もいいのだが、表紙のセンスも素晴らしい。歌舞伎の舞台衣装のまま、電車に載ったり、ヘッドホンしたり、シャンパングラスをもったりしていて、今と昔が絶妙にマッチしている。そのまま東京オリンピックのポスターとして実写化して欲しいと思っているんだけど、ダメかしら。

 

この音とまれ! 1 (ジャンプコミックス)
作者:アミュー
出版社:集英社
発売日:2012-11-02
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 こちらは箏。箏と琴の違いが分からない方へ。いまならKindle版1巻無料です。

 

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