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すべてのディスりは愛が育む…!『翔んで埼玉』魔夜峰央先生スペシャルインタビュー!!

会議室のドアを震える手で開けると、そこには圧倒的なオーラを放たれる御方が、美しい姿勢で立っていらっしゃいました…!!

 

そう!この漆黒のスーツに身を包んだ方こそ、『パタリロ!』『ラシャーヌ!』そして『翔んで埼玉』の生みの親!!40年以上、この世界に美と笑いを産み落とし続けて下さっている、マンガ家の魔夜峰央先生です!!!

 

 

 

 

累計発行部数69万部を突破した先生の『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』(宝島社)。

その実写映画公開初日に、なんと魔夜峰央先生御本人にインタビュー!

 

『翔んで埼玉』について、実写化への想い、そしてご自身の創作活動の根底にあるものまで、たっぷりお話しして下さいました!!

(インタビュアー:上原 梓

<魔夜峰央先生プロフィール>
1953年、新潟県出身。横浜市在住。1973年「デラックスマーガレット」(集英社)でデビュー。1978年、「花とゆめ」(白泉社)にて代表作『パタリロ!』の連載を開始。『パタリロ西遊記!』などのスピンオフ作品を生む大ヒット作となる。1982年、フジテレビ系列で『パタリロ!』がアニメ化。2015年に『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』(宝島社)が復刊され、大ヒットとなる。現在、「マンガPark」(白泉社)にて『パタリロ!』を連載中。また、「まんがライフ』(竹書房)では年に1回、『眠らないイヴ』を掲載している。

 

<『翔んで埼玉』とは>
東京の隣にある県、埼玉。そこは、つい10年ほど前までランプといろりで生活していたほどのど田舎。埼玉から東京に行くには通行手形が必要で、うっかり手形を持たずに都内をうろつくと、埼玉狩りで連行されるという有様でした。そんな中、東京の超名門校に眉目秀麗な麗・麻実が転校してきました。帰国子女の麗は相当な都会指数と思われましたが、実は埼玉県人で…!?
 

 

 

●『翔んで埼玉』誕生秘話

 

ーー愛と笑いあふれる“埼玉ディス”が斬新なこの作品ですが、どのように誕生したのでしょうか?構想のきっかけを教えて下さい。

 

魔夜 まったく覚えていないんです。数年前まで、描いたことすら忘れていたくらいで。連載中も、読者からまったく反響もなかった作品ですし。

 

ーーいくつかインタビューを拝見して、必ずそのようにおっしゃっていたので薄々知ってはいたのですが、本当にお忘れなんですね…でも、執筆当初は埼玉にお住まいだったとか。

 

魔夜 所沢駅からすぐの、牛沼という所に住んでいました。ネギ畑ばっかりで。

 

ーーご出身の新潟から出ていらして、最初に選んだ土地が所沢だったと。

 

魔夜 そうです。白泉社の『花とゆめ』の編集長が「良いとこなので」と勧めてくれたから所沢に。ところが、その編集長と、さらに編集部長までもがかなり近所に住んでいまして。見張られているような、そんな閉塞感があったんでしょうね、後から考えると。そんな鬱憤(うっぷん)を晴らすために描いたのかなと思います。実際どうだったかは分からないです。

 

 

©魔夜峰央『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』/宝島社

 

 

ーーつまり、白泉社の方は埼玉県人。覚えていらっしゃらないかもしれないですが、編集さんに最初にこの作品の企画をお話した時、どんな反応でしたか?

 

魔夜 私は企画の相談などは一切しません。相談してませんもん。「シェフのおまかせメニュー」みたいなもんで、何が出てくるか分からない。

 

ーーええ!?じゃあ、ページ数と締切だけが最初に提示されるんですか!?

 

魔夜 何月何日までに何ページ、みたいな、それだけで。で、その都度適当にでっち上げるみたいな。

 

ーーすると、最初に編集さんに見せるのはネームの段階になるんですか?

 

魔夜 ネームは作りません。『パタリロ!』のごく初期の段階では作っていましたけど、以後は一切作っていません。

 

ーーつ、つまり、いきなり下書きから入られるんですか?

 

魔夜 そうです。

 

ーーうわあ凄いですね…!!それであんな大胆かつ繊細な作品がたくさん生まれるなんて…!そんな『翔んで埼玉』は、わずか3回で連載がストップしています。これはどうしてでしょうか?

 

魔夜 引っ越しちゃったから、横浜に。あれは住んでいないと描けないんです。自虐なので…

 

 

●30年を経て、映画化まで!!『翔んで埼玉』ブーム到来

 

ーー連載から30年以上を経て、TV番組などで取り上げられた時、反響はいかがでしたか?

 

魔夜 特に知らなかったですね。宝島社さんから「復刻したいんだけど」という話が来た時に初めて知りました。それまですっかり忘れていました、完全に。

 

ーー映画化の話を初めて聞いた時はいかがでしたか?

 

魔夜 「本気なのか?実写化なんかできるのかな?」と思ったんですけど、キャスト案でGACKTさんと聞いて。びっくりしつつも、それならアリだなと。GACKTさんが引き受けてくれるんだったら、この映画は成功するという直感が働いたんです。そのあと二階堂ふみさんの名前も聞いて、この2人ならイケるんじゃないかなと思いました。

 

ーー私も、GACKTさんで実写化と聞いた時の、心の底から沸き上がるような興奮は忘れられません!

 

魔夜 ピッタリって感じがするでしょ?飛行機から降りてきた彼のシーン。あれでもう、成功ですよ。

 

 

©魔夜峰央『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』/宝島社

 

 

ーー私が僭越にも「成功だ!」と感じたのは、飛行機のシーンより前にある、先生のご出演シーンでした。

 

魔夜 通行人で良いから出してください、とお願いしたらすごいことになりました。

 

ーー映画のご出演、いかがでしたか?

 

魔夜 実は、映画の出演はこれで3回目なんです。1回目は『パンツの穴』という作品で。ハンバーガーショップでハンバーガーを食べている客役。映画では、武田久美子さんがウェイトレス役で、今回の『翔んで埼玉』で2度目の共演となりました。

(※武田久美子さんは、『翔んで埼玉』に二階堂ふみさん演じる百美のお母さん役でご出演)

 

ーーまさかの怪作『パンツの穴』にご出演とは!!もう1作のご出演作は…

 

魔夜 もうひとつは『パタリロ!』です。

 

ーー今年の春に公開の実写版『パタリロ!』ですね!そちらもめちゃくちゃ楽しみです。

 

魔夜 『パタリロ!』には家族で出演しました。『翔んで埼玉』と『パタリロ!』の両方に出演しているのは、加藤諒くんと私と家族だけですね。

 

ーーそんなご縁が深い加藤諒さんが、映画『翔んで埼玉』にも出られると聞いた時はいかがでしたか?

 

魔夜 ちょっと顔出してるだけかな?と思って実際見たら、結構大事な役で。なんか後でいろいろ聞くと、加藤くんのシーンで泣いたという人もけっこういて。

 

ーー分かります。あの衣装であの熱演。たまりませんでした!

 

魔夜 実は舞台の『パタリロ!』では、パタリロが埼玉県人のことをケチョンケチョンにしている描写があって。だから今回、逆に埼玉県人として虐げられるのかな?なんて加藤くんが言ってました。

 

 

 

 

●実写版への想い

 

ーー連載3回で終わっている短い作品が2時間の映画化。話を聞いた時点で、かなりの肉付け、ストーリーの改変などが想像できたと思いますが、ご自身の作品が変わっていくことへの心配や不安はありませんでしたか?

 

魔夜 全然。不安はなかったです。監督があの『テルマエ・ロマエ』を撮った人だから(※武内英樹監督)大丈夫だろうと。阿部寛さんを古代ローマ人にした人ですよ?ぶっ飛んでますよ。彼なら、GACKTさんを高校生にだってできるなと。

 

ーー監督とお話していかがでしたか?

 

魔夜 『テルマエ・ロマエ』を撮った人なら、本当に私がやりたいようなことをやってくれると思って。横浜の喫茶店で初めて「映画にしたいんです」と監督からお話をもらった時も、「好きにして下さい」と言いました。監督はうまいんですよね、ツボを全部抑えてくれる。下手なマッサージ師は全部ツボはずすでしょ。一個くらいマグレで当ててもいいのでは?と思うくらい外してくる。だけど、武内監督は全部気持ちいいとこを押してくれるから、映画を観終わった後にスッキリする。

 

ーー埼玉だけでなく、千葉や現代パートなど、原作ファンの私には想像もできないような肉付けがされていました。最初に脚本を読んだ時はどうでしたか?

 

魔夜 一応、前もって脚本を読んだ時は、まったく映像が想像できなくて、正直何が描いてあるのか分からなかったんです。でも、あれがあったからこそ成立したんでしょうね、きっと。そこは監督にお任せで。

 

ーー先生が原作で描かれた「愛あるディスり」が、とんでもないことになっていましたね!

 

魔夜 スケールアップしてますよね?たぶん、監督とすごく感性が似ているんです。私でもこうやるだろうな?ということを、全部やってくれました。

 

 

©魔夜峰央『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』/宝島社

 

 

ーーマンガファンとして、ここまで違和感無い形で原作の「続き」が映画で観れたのは初めてかもしれません。

 

魔夜 GACKTさんも、実は最初、悩んだそうです。彼はマンガが大好きで、それがアニメ化や実写化されるたびにがっかりしてきたと。そんな中、自分が出演した映画で原作ファンをがっかりさせたらどうしようと心配になった。でも、私の作品のファンだったからやってくださって。でも、全く裏切るどころかスケールアップしていたでしょ?大成功ですよ。

 

ーーそんな先生のお気に入りのシーンを教えて下さい

 

魔夜 やっぱり川を挟んでの合戦のシーンです。カードバトルの。あまりにも無意味な発展性が楽しかったです。

 

ーー確か、監督が初めて原作を読んだ時に、頭にそのシーンが浮かんできたという場面ですね?

 

魔夜 マンガ家さんでも時々いるんです、このシーンが描きたい、そこから逆のことを計算して物語を始めるという方が。私はもう、そんなことなくて、ただなんとなく雰囲気で描き始めてなんとなく終わるというやり方なんで…。監督がそういう作り方だから、むしろきちんとピースが当てはまっていくんだろうなと思います。

 

ーー先生が本当に映画を楽しみにされているご様子を、奥様のTwitterなどでも拝見してまして、予告編(ティザー映像)を観るためにご夫婦で映画館に行かれたとか。

 

魔夜 はい、行きました。『銀魂2』を観ました(笑)。

 

ーーおそらく、そこが初めて映像となったものをご覧になったタイミングだと思うのですが、どうでしたか?

 

魔夜 「こうか~!」って思って。30秒くらいなのであっという間に終わったんですけど、そのあとに後ろから「これ最高だよね!」っていう声が聞こえたんです。それで「これはイケる!」と思いました。

 

 

●『翔んで埼玉』ついに世界へ…!?

 

ーーそういえば、そもそもなんですが、『翔んで埼玉』の「翔んで」ってどういう意味でしょうか…?

 

魔夜 たぶん「翔んでイスタンブール」からじゃないかなと。あんまり覚えていないです。先日も、英語訳を考えて下さいと言われて、「Fly me to the SAITAMA」くらいしかないですよね。

 

ーー英語訳ということは、いよいよ海外版も出版ですか?

 

魔夜 いや、上海で試写があったんです。今度シカゴでもやるんですけど。

 

ーー上海で!上海の人には埼玉県の虐げられた感じとか分かるんでしょうか?

 

魔夜 これが、日本以上にバカウケだったと。やっぱり、中国なら中国で千葉埼玉問題があるんですよ。シカゴにもきっとある。こで、もしシカゴでもウケたら、本当にこれはワールドワイドな映画ですよ。世界中どこに行ってもこういう問題があるんだ。地域格差とかがあって。それをみんな、自分たちに置き換えて笑えるんだなと。

 

 

●魔夜峰央ワールドの根底にあるもの

 

ーー35年以上を経て、ご自身では忘れていたくらいの作品にいま、大きな波が来ています。先生の40年以上に渡るキャリアの中で、この『翔んで埼玉』はどんな位置づけになるでしょうか?

 

魔夜 やっぱり、普段マンガを読まない人にも私の名前や作品を知らしめてくれたありがたい作品。ここからまた『パタリロ!』に行ってくださる方がいたら、なお嬉しいです。

 

ーー『翔んで埼玉』しか読んでいない人が『パタリロ!』に行っても、通ずるものがあるので絶対に楽しめますね!

 

魔夜 基本的に、全部いっしょですから。

 

ーー『パタリロ!』の連載開始時には、いわゆる「少年同士の恋愛もの」は悲劇や悲恋が多く、虐げられるような展開の作品が多かったように思います。それを、『パタリロ!』が大いに笑って楽しめる作風で全く新しい切り口を見せてくれました。『翔んで埼玉』の埼玉ディスも、気持ちよく笑い飛ばせる形で描かれています。そこには「愛」がベースにあるんだなと勝手に思っているのですが、笑いに対するこだわりはありますか?

 

魔夜 神様の本質は愛だと想っているんです。笑いというものは神様の領分だと思うんです。笑いの神様という言い方がありますけど、笑いの神様がいるんじゃなくて、神様の本質が笑いにつながる、愛にもつながっているんです。笑うと幸せになるでしょ?それが人間。だから、私はハッピーエンドを常に描きたいと思っています。もし、ちょっと考えさせられるようなラストがあっても、絶対に救いがあるものにする。愛と笑いっていうのは私の一番基本的な部分なんです。

 

 

 

 

ーー『翔んで埼玉』のGACKTさん、『パタリロ!』の加藤諒さん、先生の作品には不思議と、原作ファン全員が「納得!」と叫びそうな俳優さんが起用されています。そんな出会いも、ベースに愛があるから神様が引き合わせてくれるのかもしれませんね。

 

魔夜 運命的にピッタリくる役者さんがいるんですね。全部良い方向に転がっていくんですよ。

 

ーー先生は、もう『翔んで埼玉』の続編は描かれないと断言されています。『パタリロ!』と『ラシャーヌ!』が作品を超えて電話で会話した時のように、せめて『パタリロ!』の中に麗や百美が登場したりは……

 

魔夜 世界観が違いすぎるから無いですね。

 

ーー逆に、『翔んで埼玉』の作中にバンコランが ひとコマだけ出てきますが…

 

魔夜 バンコラン出てます?あっ、ホントだ!(笑)

 

 

というわけで、『翔んで埼玉』のことは本当にキレイに忘れていらっしゃった先生ですが、映画『翔んで埼玉』への思いやご自身の創作活動について、終始穏やかかつ流麗にお話下さいました。先生、お忙しい中本当にありがとうございました!

 

『パタリロ!』のバンコランが『翔んで埼玉』のどこに出てくるのか、気になった方は、ぜひ『翔んで埼玉』の原作を改めてお読み下さい!!

 

 

『翔んで埼玉』レビューはこちら!

>>埼玉県人には草でも食わせとけ!映画『翔んで埼玉』は漫画実写化の最高峰!!

 

 

翔んで埼玉
著者:魔夜峰央
出版社:白泉社
販売日:2016-03-01

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