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年収3500万円!?それでもなり手が見つからない!高給だけどブラックな仕事の現実が描かれた漫画『麻酔科医ハナ』

医療先進国ニッポンで、先進的な”お産”が普及しない理由

 

2年前の冬、私はひどい吐き気に悩まされていた。

重めの二日酔いだと自分に言い聞かせること数日間、いっこうに吐き気はおさまらない。ふと、生理が2ヵ月近く来ていないことに気づいた。つまり、妊娠をしていたのである。

 

産院で決定的な写真が撮影され、運命を受け入れたのもつかの間…次なるアクシデントが私を待ちかまえていた。

希望する産婦人科の分娩予約枠がもういっぱいだった!のだ!


「保育園の前に分娩台まで争奪戦をしなきゃなんないのかよ…」と絶望されるのはまだ早い。

 

分娩予約がとれなかったのには、ある理由がある。 それは、私が希望したのが完全無痛分娩だったからだ。

無痛分娩とは、お産の際に麻酔を使うことで陣痛を和らげるという方法

腕の良いお医者様にかかると(勿論体質にもよるようだが)、あの激しい陣痛をほとんど感じずに出産できるという。

 

痛いのは嫌ですもん、それは選ぶしかないですよ……。でも二日酔いを言い訳に産院行きを先延ばしにした私に、その椅子はもう残されていなかった。

日本において、完全無痛分娩を24時間体制でやってくれる産院は限られているのだ。 

 

欧米では自然分娩より多数派が選択するというこの無痛分娩、それが、医療先進国と名高い日本でそれほど普及していないのはなぜなのか?

その大きな理由の一つに、麻酔科医の不足がある。

この、超不足中の人材・麻酔科医のお仕事に、日本ではじめてスポットライトを当てたマンガが本書『麻酔科医ハナ』だ。 

 

 

 

早朝から深夜まで1日15時間労働、しかも休みは月2日。

 

まず冒頭からして凄まじい。

主人公の麻酔科医・華岡ハナ子は2コマ目にして辞表を握りしめて登場する。

 

 

©松本克平・なかお白亜/双葉社

 

 

麻酔科医って、お給料いいんじゃないのか、手術中の患者の生命活動を管理する、すごくやりがいのある仕事なんじゃないのか…?

当たり前の疑問は、数ページ目で吹き飛ぶ。

 

 

©松本克平・なかお白亜/双葉社

 

 

「早朝から深夜まで働きづめで1日15時間労働 しかも休みは月に2日」というこのセリフ。

事実を漫画化するにあたって、多少デフォルメされている可能性も否めないけれど、amazonのレビューに寄せられる現役医師たちのコメントを読む限り、事実無根ということでもなさそうだ。

 

帯には、「年収3500万円でもやりたくない仕事ってナニ?」という文句がでかでかと載っていた。

じっさい、数年前、ある病院で、あまりの激務に耐えかねた麻酔科医が一斉に退職してしまい、最高年収3500万円で人材を急募したというニュースが世間を賑わせたこともあった。

 

そんな過酷な状況でも、ハナは(幾度か辞めたいと口にするものの)数々の症例を、持ち前のあっけらかんとした性格で乗り切っていく。

物語には、まったく悲壮感はない。

生死を扱っており、しかもかなりの情報を詰め込んであるにもかかわらず、作風はいたってコミカルだ。

 

手術中の患者は眠ってしまうため、お世話になった麻酔科医の顔は覚えていない。失敗すれば当然訴えられるけれど、一方で成功して褒められることもない。

麻酔科医は、いってみれば外科手術の裏方的な役割で、患者から直接感謝されることもほとんどない。

 

それでも、私達を、劇薬によって死に近いところまで降ろすというリスクを負い、手術の痛みやストレスから守ってくれる麻酔科医の姿が、きわめてリアルに描かれた『麻酔科医ハナ』。

閉じられた世界を純粋なエンターテンメントとして楽しませてくれる、珠玉のシリーズだ。

 

 

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