TOP > マンガ新聞レビュー部 > 個人間の適切な距離感とは?『違国日記』は周りとの付...

人と人の出会い、そしてコミュニケーションを描くのはマンガの定石のひとつ。
そのなかでもヤマシタトモコ先生は、人と人の距離のつめ方を描かせたら天下一品だと思っています。(※あくまで個人の感想です)
 
その人がいま連載している漫画『違国日記』には、「他人」同士が探る適切な距離感の答えの一つが描かれています。
 
人づきあいが苦手だと思う人こそ読んでほしいです。救いになります。
 
 
違国日記 1 (フィールコミックス FCswing)
無料試し読み
著者:ヤマシタトモコ
出版社:祥伝社
販売日:2017-11-08
 

人を踏みにじらないという基本の”き”

 
『違国日記』は、事故で両親をなくした15歳の子供・朝と、その叔母である槙生が出会い、同じ屋根の下で生活していく物語です。
 

事情があって、あまり姉夫婦との交流はなかった槙生。しかし姉夫婦の葬儀の日、周りの雑音を振り払うように朝を引き取ることを決断します。

 

ほぼ初対面の2人が徐々に関係を作っていく物語ーーと言ってしまえばそれまでですが、人と人の出会いと関係構築の過程を描く名手のヤマシタ先生にかかると、読者の心をうち、同時にぐさぐさとえぐってくる展開になります。
 
 
血縁関係があるとはいえども、あまり交流のなかった2人。
そのやりとりからは、初対面の他人から家族など、あらゆる人との付き合いで大切にしたいことが読み取れます。
 
 
そのひとつは、槙生が最初に朝に伝えた「私は決してあなたを踏みにじらない」ということ。
 
親を亡くした朝には、葬儀の場のようなところで主に大人がいろいろな言葉をかけます。こうした場は人間のエゴがでるところで、未成年の朝の思いや願いは踏みにじられる。
 
それに対し、槙生の言葉は距離を取って突き放していそうで、実は一番、朝に向き合っているように思えます。
 
そしてこういうことを描かれると、自分が槙生のようにできているかも自問自答させられます。自分が踏みにじられたくないなら、相手も踏みにじらないーーこれは1対1の関係では基本だと思わされました。
 
 
2人で暮らし始めたあとも、槙生は朝をいい意味で子供扱いせず、自分が苦手なことや出来ないこと、それでもやりたいことをきちんと伝えていきます。
15歳の朝を、ひとりの個として認めて言葉を交わそうという態度は、現実社会でも心がけたいことです。
 

電話が苦手な槙生に「わかる」

 
私がここまで槙生の人との距離の取り方に感情移入するのは、槙生の感じる人付き合いのきつさが身にしみているからです。
 
槙生の人づきあいの苦手さは、
 
  • 電話に出るのが苦手
  • わーっといわれると混乱して怖い
  • 人といると疲れる
 
などのエピソードで描かれます。
 
大変恐縮なのですが、どれもすごく分かります。というより身に覚えがあります。
 
ヤマシタ先生の作品に対してこんなことをいうのもおこがましいのですが、きっと槙生にお会いできたら「わかります」と伝えてしまいます。
 
作中で描かれる様子からすると、朝の母親で槙生の姉は、相手のためと思いつつもずけずけいうタイプだったよう。
(というか、事故の報道で「内縁の妻」と書かれていたことも、下世話ながらすごく気になります)
 
こういうタイプは「圧」が強くて、すごくお付き合いするのにパワーが必要なのです。
 
 
大人になると、こうした苦手な人からはすこーしずつ距離を置くということを覚えますが、子供の頃、特に血縁関係だったり同じ学校のクラスだったりすると、関わらざるをえないーーその影響は朝にもあったように描かれます。
朝にとって、槙生を含むいろいろな「大人」との付き合いが、いい方向に作用してくれることを願ってやみません。
 

生きづらい人こそ、槙生さんを見習いたい

 
ヤマシタ先生の作品にここまではまったのは、たぶん槙生の人との距離感の取り方が腑に落ちたから。
 
 
ということで、今生きづらさを感じていたり、周りの人とうまくやれないと思っている人こそ、この作品を読んで「自分だけじゃない」というのを実感してほしいです。
そして、槙生の言葉を借りて、周りの人にうまく自分がどのように人との距離感を保ちたいか伝えてほしいと思います。
 
なぜなら多くの人は「他の人も自分と同じ距離感を保ちたいものだ」と思いがちだからです。
伝えることを「いいわけだ」とおっしゃる方もいますが、回りまわって、自分の生きやすさにつながります。

 

現に槙生は15歳の朝に向かって「お互いダメなときは言って……協力してやっていこう」といいつつも「落ち込みやすいクズなので…圧は弱めで」といいます。
 
「大人としてはだめだろう」と思う人がいるかもしれません。でも大人だって苦手なことやしんどいことはある
この態度はむしろ、共同生活をする相手にはフェアだと思います。
 
 
ではこうした生きづらい人の支えは何か。
それは槙生さんが生み出すような小説をはじめとする作り物語の世界です。もちろんマンガもその一つ。
 
 
心が強い人、周りに世界がある人は「作り物語」を必要としない人もいるようです。
 
でも世の中にはそうでない人もいる。彼らのために槙生は、そしてヤマシタ先生は、物語を紡ぎ続けてくれているのだと信じています。

 

 

違国日記 1 (フィールコミックス FCswing)
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