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漫画市場のなかでジャンルとして成立している「探偵物」。

この探偵物という分野の創設に貢献した作品が古今東西あるなか、コナン・ドイル氏による「シャーロック・ホームズ」シリーズもそのひとつだと私は思っています。

 

長い歴史のなかで、漫画やドラマ、映画などの各種コンテンツのモチーフになりつつも、その高いキャラクター性と確固とした世界観で、なかなかアレンジは難しい。

この難題に、面白い方向から取り組んだのが『憂国のモリアーティ』(原案:コナン・ドイル、構成:竹内良輔、漫画:三好輝)です。

 

当時の英国の光と影をとらえつつ、原作ではうかがい知れない「『悪』には『悪』の理由がある」が見事に描かれています。

 

憂国のモリアーティ 1 (ジャンプコミックス)
無料試し読み
著者:三好 輝
出版社:集英社
販売日:2016-11-04

 

原作の世界を「裏」から見る

 

「シャーロック・ホームズ」シリーズのすごさは、キャラクターもの・推理物であると同時に、ロンドンというご当地ものだということです。

子供の頃学校の図書館で、児童向けのシリーズを読んだ私は、ずっと「ロンドンにいったら、ホームズのように馬車の後に飛び乗って犯人を追跡できる」と思っていました。

 

もちろんそのあと、ロンドンにいったとき、もはや馬車はないことを知りました。それでもシリーズで感じた「ロンドン」のイメージを裏切るものではありませんでした。

やや物語に入り込みやすい子だったとはいえ、ひとりの日本人をそこまで思い込ませる、高い完成度の世界だからこそ、後生のクリエイターによるアレンジやオマージュ作品作りは非常に困難なのです。

 

これに対し『憂国のモリアーティ』は、タイトル通り原作でホームズの「敵」とされるモリアーティ教授に着目しています。

 

高い知能を持ち大学教授を務めつつ、犯罪者集団をまとめ上げるという2つの顔を持っていたモリアーティ教授。

『憂国のモリアーティ』は、彼がなぜ「犯罪のナポレオン」(ホームズ)と呼ばれるほどの悪事を働くようになったのかを、幼い頃からの背景を描いて読者を納得させ、万を持してロンドンで犯罪指南を始めさせます。

 

それに対するはもちろん探偵としてのシャーロック・ホームズ。相棒のワトソンも出てきます。

 

物語が進むにつれ、英国の秘密組織、MI6のメンバーとして有名なあのキャラクターも登場。19世紀のロンドンを震え上がらせたという「切り裂きジャック」も出てきます。

 

悪には悪の理由がある

 

モリアーティらの活動は、今の私たちからみれば犯罪の教唆として立派に罪が成立します。

それでも彼らが読者にかっこよく見えるのは、「弱者を救う」「既得権益をむさぼる貴族体制を打ち倒す」という今の私たちが賛同できる動機があるからです。

 

貴族の身分制、インドでの戦争、下町の路上生活の子どもたち・・・憂国のモリアーティでは、原作で少しずつ垣間見えていた19世紀当時のロンドンの影を描き、モリアーティらの行動の動機としています。

影を描くことで、綺麗な場面だけを取り上げるよりも19世紀のロンドンらしさが、強まっています。

 

実は原作では、モリアーティ教授はあまり出てきません。ホームズらの言及を含めても数作品にとどまります。

 

モリアーティ本人のキャラクターや彼の周辺の人々の設定、および物語の展開は作り手の想像力によるところが大きいのです。

その点では、クリエイターの想像力を存分に働かせたともいえます。

 

にもかかわらず、推理小説「シャーロック・ホームズ」シリーズ好きな私も裏切られませんでした。きっと原作ファンも満足できます。

その点で、古典作品のコミカライズのお手本のひとつともいえるのかもしれません。

 

 

憂国のモリアーティ 7 (ジャンプコミックス)
無料試し読み
著者:三好 輝
出版社:集英社
販売日:2018-11-02

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