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前科者 (1) (ビッグコミックス)
著者:香川 まさひと
出版社:小学館
販売日:2018-08-30

 

保護司は、社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、もつて地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、その使命とする。」(保護司法第一条)

 

保護司は犯罪をしたひとの立ち直りを最前線で支える無給の国家公務員。

ボランティアという存在でありながら、国家公務員と同じ守秘義務など、数々の責任を背負って活動する。

 

少年院や刑務所から社会に戻ってきたひとのなかで、家族や恋人、友人に迎えられるひともいるだろう。これからの人生を送るにあたり、身近に支えてくれるひとがいるのはとても心強いものだ。

 

その一方で、塀の中で贖罪し、更生自立を誓った人間が外に出るとき、そこには誰ひとり出迎える存在がいないとき、孤独な個人が立ち直っていくのは簡単ではない。

ひとは関係性のなかで生きる生き物だからだ。

 

どんな犯罪をしたひとであっても、その更生自立を信じ、誠心誠意支えるひとたちがいる。それが保護司という存在だ。

すべての支えたひとが更生自立できるわけではない。どんなに親身にかかわっても、再び塀の中に戻っていくひともいる。

 

それでも、ひとを信じ、ひとの更生自立を支える保護司を描いた漫画『前科者』は、金銭対価を求めない仕事に全力で取り組む人間の存在をリアルに感じることができる一冊だ。

 

 

学生時代の奨学金と、ブラック企業で働いた5年で抱えた病気によって抱えた借金を持つ阿川佳代(あがわかよ)は、朝晩の新聞配達とコンビニのバイトを掛け持ちながら、保護司を務めている。

 

婚約寸前の恋人をレイプされたことで兄を殺害した石川二朗(35歳)を担当することになった阿川は、仮釈放となった石川を温かく迎え入れる。

 

更生自立に意を決した石川の前に立ちはだかるのは、犯罪者であることを揶揄する地元の人間、婚約寸前であった恋人との再会、彼女をレイプしたとされる兄について飛び交う憶測や推測と噂。

どれもが石川を惑わせ、更生自立を阻害するものばかりだ。

 

それでも阿川は石川を信じ続け、支えていく。実際の保護司の方々は人格者で、『前科者』が阿川を通して描こうとする姿が重なる。

どうしてそこまで他者のためにできるのか。無給のボランティアなのに。そんな感情を抱く人間も少なくないだろう。

 

コンビニのオーナーは阿川に問う。

 

なんでそんな事してるの?一銭にもなんないのに。

 

それに対して阿川は答える。

 

一銭にもならないからやってるんです。保護司の仕事をしなければ、私はお金だけのために生きてる事になる。

 

このような生き方をしている人間が実際にいる。

誰かに褒められたいわけでもなく、お金のためでもなく、まさに使命感を持って生きている。

そんな保護司という仕事を知ってほしい。

 

 

前科者 (1) (ビッグコミックス)
著者:香川 まさひと
出版社:小学館
販売日:2018-08-30

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