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アオアシ(1) (ビッグコミックス)
著者:小林有吾
出版社:小学館
販売日:2015-06-19

 

自分は仕事ができる方である。これまでの経験や実績、周囲からの評価と自己評価によって、自分が“そこらへんの誰か”より仕事ができると自信を持つこと、それは悪いことではない。

 

しかし、本当にビジネスの第一線で活躍している“仕事のできる”ひとたちの世界に足を踏み入れたとき、あまりの違いに愕然とし、ときに自信を喪失しかけることもあるだろう。

自分はどうしたらいいのか悶々と悩んでも、たった一つの正解などあり得ない。

 

そんなとき、私たちに方向性を示してくれるのが『アオアシ』である。

主人公の青井葦人(あおいあしと)は、片田舎でサッカーを愛する中学生。そこで東京シティ・エスペリオンのユース監督である福田達也と出会う。

 

葦人の才能に気づいた福田は、高校年代最高の育成指導を行う東京シティ・エスペリオンのセレクションに葦人を招待する。

そこで合格した葦人は故郷を捨て、最高の才能と最高の育成環境が整う世界へと踏み出していく。

 

『アオアシ』は、高校の部活ではなく、Jリーグの高校年代をテーマにした稀有なサッカー漫画であるが、本書が私たちに示してくれるのはサッカーを越えた、「ひとの成長」における本質の学びである。

 

ビジネスにおいて、重要なのは組織のビジョンとミッション、そして厳しい世界を戦い抜く戦術や戦略である。

しかし、それを形にするために重要なのは「個人戦術」であり、磨き抜かれた基本と体得する個の力である。

 

止めて、蹴る

 

サッカーにおいて最も重要なことはボールを「止めて、蹴る」ことである。日本代表選手はどんなボールでも簡単(そう)に足元に留める。常人からすれば曲芸だが、それは子どものうちから数えきれないほどおこなった反復練習の賜物だ。

 

漠然とやってきた選手との差はアホほど歴然となる

 

単純な「止めて、蹴る」という動作も、プロのJリーガーですら上手下手に個人差が出るほどだという。

この『アオアシ』では、「止めて、蹴る」を漠然と、漫然とやるのではなく、何を目的に、どのような意図をもって「止めて、蹴る」のかを示してくれる。

 

どのようなビジネス分野においても、基本となる「止めて、蹴る」があるはずだが、本当の意味で、その基本を意識して反復的かつ効果的にやり続けているだろうか。

改めて自問自答してみることで、日常の自分の所作を見直すきっかけになるはずだ。

 

観察する

 

私たちの仕事は、社内外問わず、多くのひとたちと作り上げ、成し遂げていく。

そんなとき、私たちは仲間やステークホルダーを観察し、「相手だったらどうしてほしい」のかを意識できているだろうか。相手を観察し、そのうえで意思の疎通が生まれなければ意味がない。

 

『アオアシ』では、小さな頃からJリーグの下部組織でサッカーエリートとしての教育を受けたものと、中学や高校から参画したものの間にサッカー観の違いがあり、それは個々の選手どうしても存在する。それぞれが意思疎通できなければ、チームとして成立しない。

 

常に自分を中心に考えていた葦人が、仲間を観察することで、彼らの意志を見出し、「何をしてほしいのか」「どのようなことを意図しているのか」に気が付く。

自らの意志を貫徹させるにしても、相手を観察し、意思疎通ができていなければ、サッカーであっても、仕事であっても、孤立する。まさに葦人を通じて、自分が本当に周囲の意志や意図をくみ取ろうと観察しているかを問われる。

 

象徴的なシーンとして、観察する重要性に気が付いた葦人が仲間に、なぜ言ってくれなかったかを問うた。仲間からの回答こそがすべてを含意している。

 

言ったんだ。重要性は、普段の練習から声を掛け合っていた。君の耳にも届いていたはずだ。簡単な話と勝手に納得していたのか、もとから興味がなかったか。なら絶対に無理だ。たとえ僕らが懇切丁寧に説明したって、君の中に残るものはなかったと思うよ。

 

言語化する

 

感覚で勝負してきた葦人に突き付けられた課題が「言語化」である。

何を意図していたのか、なぜうまくいかなかったのか。なぜうまくいったのか。それを言語化しなければ再現性が生まれない。そういう選手は成長しない。なぜなら再現ができなければ、すべては偶然の産物となり、周囲も理解のしようがないからだ。

 

仕事も私生活も、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともある。誰でも失敗がある。同じ失敗を繰り返さないことも、ひとつの成功を次につなげられるようにするためにも、なぜなのかを言語化し、自分にも仲間にもしっかり伝えることこそが、個の能力を高め、チームの力を最大化する鍵である。

 

ただ、一人だけ言語化が不得意と葦人から思われた人物がいる。それが東京シティ・エスペリオンの最高傑作であり、ユース生でありながらプロデビューしている栗林晴久である。将来を嘱望された栗林の言葉を葦人は理解できなかった。そして周りの人間がそれをフォローする。

 

彼の場合、理解できる選手がいないレベルに、突き抜けているだけなので。

 

天才的なレベルの人間は必ず存在するが、そこに到達するためにも、まず私たちは言語化を習得し、その先に突き抜けたひとたちとのハイレベルな意思疎通に到達できるのだろう。

 

じゃあ、どうするのか。

 

日本の最高峰のチームに参画する葦人や同級生は、日々、自分の意識や能力がどれほどトップレベルの人間に比べて劣っているかを突き付けられる。

これは私たちの日常でもよくある光景であるが、『アオアシ』が非常に大切にしている言葉がある。

 

じゃあ、どうするのか。

できないなら、どうするか。何が自分にできるのか。

 

思考を止めない。いますぐできないことは言語化して認識し、できるようにする。

 

しかし、この瞬間においては、自らの不十分性を受け止めつつ、「じゃあ、どうするのか」「できないなら、どうするか。何が自分にできるのか」を考え、実行する。

 

できないことがダメなのではない。自分に失望しても思考を止めることなく、やるべきこと、やれることを分析し、実践していくことの積み重ねが、経験と才能あるひとたちとともにチームとなるための鍵である。

 

 

さて、本書はサッカー漫画でありながら、ビジネスで大切なことを学び取ることのできる稀有な人生の指南書である。

ここでは触れないが、もうひとつ、大きな学びになるテーマが「コーチング」と「マネジメント」である。

 

前述した監督・福田達也が仲間や選手にかける一つひとつの言葉、タイミング、解答を言わずに気づかせる技術は、仲間と選手を信頼しているからこそ、ときに厳しく、ときに優しく、周囲を導いていく。

ステークホルダーとの調整や部下のマネジメントに悩むひとにも、ぜひ、『アオアシ』を読んでいただきたい。

 

 

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