TOP >
マンガ新聞レビュー部 >
あなたの留守中に家に勝手に人が入って生活しています...

あなたが朝起きて学校や会社に行く時に鍵をちゃんと閉めて出て行って。
一日を終えて夜に帰宅した時に違和感を覚えた事無いですか?
“あれ?前日の夜にシャワー浴びた後のタオルってここに置いたっけ?”
“あれ?最近シャンプーの減りが早くない?”
“あれ?牛乳があとちょっとしかない。こんなに飲んだっけ?”
これ、気づかないですよね。
自分がいつも使っているものがほんのちょっとずつ減っていてもわからないものです。
けど、これ。
あなたが外出中に知らない誰かが勝手に家に入っていて使っているとしたらどう思いますか?
え?そんなわけない?家の鍵もちゃんと閉めてる?
勝手に合鍵を作られていたら?
そしてあなたがいないうちに勝手に家に入ってシャワーを浴びて、あなたが前日ポンと置いたタオルで体を拭いて、風呂上りに冷蔵庫の中から牛乳を取り出してちょっとだけ飲んでいるとしたら?
人って驚くほど規則的に行動しています。
毎日決まった時間に起きて会社に行って仕事して夜遅くに帰宅します。
アルバイトが入っている日だってだいたい決まっている。そしてその日はしっかりバイトして働いてから帰ってくる。
実はあなたが毎月家賃を払って生活している“その家”は実に半日以上ももぬけのからなのです。
誰も使っていないのです。
そこに目をつけて。
住人が確実に不在の時間帯を狙って(合鍵を作って)忍び込んで、シャワーを浴びて牛乳を飲んでテレビを見てゲームを遊んで(セーブしない)目覚ましをセットしてゆっくりベッドで眠る。そしてあなたが帰宅する前に確実に(鍵を閉めて)出ていく。
そんな生活をしている人たちが存在するのです。
それは【ヒル】と呼ばれています。
生物に寄生する蛭(ひる)からそう名付けられました。
ヒルはあなたの生活サイクルを事前に観察して“彼氏(彼女)はいない?実家の親が勝手にやって来て掃除をして帰るような家庭環境や関係性ではない?同じ街に弟や妹がいて定期的に泊りに来るようなことはない?”といったことを確認してからターゲットを決めています。
そして実は人の家の合鍵なんて簡単に作れるものなのです。
こうなるともう完全犯罪成立です。
だって誰も気づきようがないんだから。
そしてそういったターゲットの合鍵はひとつじゃない。ヒルは複数の合鍵を持っていて曜日やターゲットの生活サイクルに合わせて使い分けています。
“OLさんは今日は飲み会で遅くなるからもう少しゆっくりできるな”
“中年サラリーマンは週末まで出張だからもう2泊できるな”
“全自動洗濯機を使って自分が今着てる服も全部洗濯しよう”
ってな具合です。
そんな【ヒル】という存在を描いた作品。
それがこの『ヒル』(今井大輔)です。
実は私は先日、この今井大輔先生に直接お会いする機会があって“どんな漫画を描かれているんですか?”と伺って、初めてこの作品を知ったのですが。
全5巻ということもあって一気に読みました。
めっちゃ面白かった!
もちろん街には複数のヒルが存在していて、そいつらにもルールがある。そしてヒル同士の衝突が起きて次第に闇世界の話になっていく……もう、ね、“なんだよこれ!?めっちゃ面白い!俺の好きなモノ全部詰まってるやん!!なーんで今までこの漫画の存在を俺は知らなかったんだよ!?くそう、まだまだ知らないだけでこんなにもオモロイ漫画ってあるんやなぁ”って心底反省したのでこの場を借りて紹介させていただきました。
ちなみに。
第一部は全5巻で完結していますが、第二部がスタートしています。新しい主人公で新しいストーリーで。その名も『ヒル・ツー』。こちらもめっちゃ面白いです。
ログインして
ご自身のTwitter、Facebookにも同時に投稿できます。すべての人気のコメントを見る