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『左ききのエレン』作者のかっぴー先生と『東京トイボックス』作者のうめ先生のタッグで作り上げる『アイとアイザワ』という漫画は、一言で説明するのが困難なほど様々な魅力がある。

 

 

ホリエモンこと堀江貴文さんが推薦文で書いたように、映画『ターミネーター』にあった「人間vsAI(スカイネット)」の対立構造をより現代的に、よりリアルに描かれた世界観。

小説約5話分を詰め込んだ一話目で、テンションはいきなりクライマックス
(C)kappy2018/UME2018

 

世界を救う主役が「瞬間記憶能力(カメラアイ)」という特異体質を持った女子高生(アイ)である、という大胆な設定。

 

突然のナンパにも「まだ読んだことのない本を読みたい」という欲望に勝てない女子高生
(C)kappy2018/UME2018

 

さらにはそのアイが共に世界を救う人工知能に恋をするという恋愛要素など、エンタメ作品として読者を惹きつける要素がふんだんに盛り込まれている。盛り込みすぎて、広げた風呂敷をちゃんと畳みきれるのか若干心配になるほどだ。

 

だが、だからこそ普段あまりSFを読まない僕でも抵抗感なく読むことができたのも事実である。

リアルな人との真の対話ができず、アイが二次元の世界に傾倒していたことがよく伝わってくる (C)kappy2018/UME2018

 

それもこれも、広告業界出身というかっぴー先生のバックグラウンドと、熱量のこもった表現に長けたうめ先生のコラボレーションがなせるワザなのだろう。

 

そんな『アイとアイザワ』だが、僕が最も興味深いと感じたポイントは、「天才の孤独」と「コミュニケーションの不完全さ」という、かっぴー先生自身が本作の裏テーマに設定しているポイントである。

天才とは、孤独な存在である

先日女子テニスのUSオープンで初優勝を果たした大坂なおみ選手は、自身が完璧主義であるがゆえに、少しのミスで調子を崩してしまうことが多かった。

史上初の永世七冠を獲得した将棋の羽生善治氏は、勝ちが見えると手が震えてしまう。あるいは、20世紀の前衛美術のランドマーク的作品「泉」を発表したマルセル・デュシャンは、日常的に使用されている小便器にサインを書くことによって「芸術作品」を仕上げ、「美術」という言葉の危うさについて問題提起したと言われる(※諸説あり)。

 

天才やアーティストの思考や発想は、往々にして次元が高く常人が理解するには少々時間が必要だ。

彼らの考えを知れば知るほど、理解はできても共感はできないことの方が多いし、彼らもまた、真の理解者を獲得することは難しい。

 

『アイとアイザワ』の主人公・アイも、自身の特異体質のために同じ悩みを抱えている。

孤独を救えるのは、同じ孤独を抱えたものだけなのかもしれない
(C)kappy2018/UME2018

 

神保町中のあらゆる本をすべて読んでしまった女子高生と対等に会話ができる人間がどこにいるだろうか。

 

彼女は、同じレベル、同じ速度で語り合え、心から理解し合える相手を探し求めていた。

そこで出会ったのが、シンギュラリティ(技術的特異点)を超えた人工知能・アイザワである。

 

アイザワは、フラッシュトークという手法を用いて、12万文字もの情報を1秒に3回、じつに一分間に2160万文字もの膨大な情報をアイに伝える。

フラッシュトークの様子が見事に表現された一コマ。ひと目見て天才との圧倒的な差を感じさせられる 
(C)kappy2018/UME2018

 

アイとアイザワのコミュニケーションは常人の7万2千倍の速度で繰り広げられた。

実体を持たないアイザワにとっても、このレベルでのテキストコミュニケーションが叶うパートナーがいなかったのだ。

 

こうして、二つの孤独は瞬時にして真の理解者を獲得することとなる。

アイとアイザワは、二人で一つになる

かっぴー先生がインタビューで「アイにとって神のような存在としてアイザワを立てた」と言っていたが、作中にも人工知能=神と見立てたこんな一幕がある。

「もし人工知能が神ならば、話し相手として新たな人工知能を生み出すのではないか」という仮設は興味深い
 (C)kappy2018/UME2018

 

昨年夏に、FacebookのAI研究組織が二つのAIで会話をさせると次第に人間に理解不能な言語で会話をし始め緊急停止した、というニュースがまことしやかにささやかれたが、それに近い現象が起きるのではないか、という妄想を広げるシーンだ。

 

まさに『ターミネーター』に登場するスカイネットであり、『2001年宇宙の旅』のような世界である。

 

しかし、現時点で意思を持った人工知能は確認されていない。

いくら神といっても、司令を出す人間がいなければただのプログラムである。

 

アイザワ自身も、知り得た情報の質と量に比例してアウトプットの精度が高まるということを認識している。だからこそ、同じレベルでコミュニケーションができるメディアとしてのアイの存在が必要だったと。

 

そう考えると、アイザワは、アイという肉体を獲得したことによって神に近づいたのかもしれない。

 

ガラスに映る自分(とアイザワ)の姿を見て、アイは何を思うのか
(C)kappy2018/UME2018

アイザワの未来予報によって「戦争が起きる」ことを知ってしまったアイは、世界の崩壊を阻止するために動き始める。

 

しかし、決して世界平和を願うわけではなく、アイはアイザワに自分のためだけに小説を書いてもらうために、アイザワは文明の行く末を見届けるために。

この、超個人的な理由のためにとても大きなことをやろうとしている、というのはすごく好きなところだ。

 

世界規模の戦いに巻き込まれることすら、世界で唯一の理解者を獲得したアイにとっては問題ではないのだろう。

誰からも理解されなかった天才が、一人の人物との出会いを通じて心を開き始めるということは現実世界でも起こる。

 

アイにとってはアイザワがそうであり、二人にしか理解も共感もないコミュニケーションが成立した。

しかもアイ好みのイケボと容姿(二次元)となれば、惚れてしまうのも無理はない。

 

全2巻で完結する本作が、後半どんな展開を繰り広げてくれるのか、アイザワの未来予測があれば覗いてみたいものだ。

 

 

 

また、現在単行本発売記念として、「『アイとアイザワ』イケボ選手権」なる企画が進行中だ。

 

声を録音して #アイとアイザワイケボ選手権 のハッシュタグを付けてTwitterで投稿すると最高4万円分のAmazonギフト券が当たるので、ぜひ参加してみてほしい。

 

 

 

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