TOP > マンガ新聞レビュー部 > 立ち塞がるものあればこれを撃て!!犬たちは、主人を...

『人狼』と聞くと、ほぼ99%の今の人は、パーティーゲームの「人狼ゲーム」をあげるだろう。

それは正しい。仲間と和気あいあいと、インスタ映えもするしね。

 

しかしだ、残りの1%古いオタクは、きっと黒い装甲をまとった地獄の番犬たちが戦うアニメ映画『人狼 JIN-ROH』を思い出すのだ。

そしてその中のさらに1%の中の純血種<押井守信者>たちは、犬?狼?と聞いて、そのアニメ映画の原作たる漫画の『犬狼伝説』思い出すのだ。(正確には原作ではないのだが)

 

犬狼伝説
著者:藤原 カムイ
出版社:日本出版社

 

 

『犬狼伝説』は30年前に連載された古い漫画だ。では、なぜこの漫画をオススメするのか?

――話は簡単だ。 韓国で『人狼 JIN-ROH』がカン・ドンウォンで実写映画になるのだ。

くどいようだが、だれもが知っている「人狼ゲーム」のプレイ動画や、人狼の正体を探るような、サスペンス的な映画とかではない。

 

これは、三つ巴ならぬ四つ巴の<過激派 対 警察公安特機隊(警察軍)、権力闘争・組織の生存をかけた、ひたすら暗くて重い血みどろのアクション映画である。

つまりは、この『人狼 JIN-ROH』という映画つながりからの、すべての原点である『犬狼伝説』を紹介すべきなのだ。

それは今日までマニアの中で語り継がれている「ケルベロス・サーガ」の始まりなのだ。

 

『犬狼伝説』は簡単に言うと、戦後日本の「内戦【シビルウォー】」を描いている作品だ。

 

話しはこうだ。第二次世界大戦後に、復興への足がかりを掴む日本だが、高度成長から取り残された貧困層は過激派となり、学生運動のはてに、重武装化した過激派<セクト>となった。もう警察の力では対処できなくなり、政府は、戦前の反省から<自衛隊>の介入を防ぎつつ、首都だけの治安を維持し、自衛隊と同等の武力を持つ警察と軍の間の子の警察軍を作り出した。それこそが、重武装の警察軍<特機隊>である。過激派セクトと闘争を繰り返す日々、抗争はエスカレ―トしていく。

しかし、セクトは特機隊の圧倒的な強さにしだいに追い詰められ、市井の人々は安息の日々を指折り数えるばかりとなった。

 

特機隊は国家の治安の番犬である。だから彼は<地獄の番犬 ケルベロス>という異名で呼ばれている。

 

特機隊は、異様な姿で他を圧倒する。その出で立ちは、赤外線スコープ、ガスマスク、フリッツヘルム、黒い装甲服を身にまとい、重機関銃MG34を装備する、あらゆる弾丸を跳ね返し、突出した火力で敵を粉砕する、その存在自体が”暴力”そのものである。同じ治安組織の警察の力を遥かに凌駕していた。

 

だが、現実は残酷だ。彼ら特機隊の役目は、時代とともに終えつつあったのだ。

予想以上に力をつけてしまった特機隊、時代遅れの犬たち。そんな彼らの躍進を疎ましく思う<警察>、なんとか抑え込みたいと公然・非公然の工作活動をする<公安>、実戦経験豊富な特機隊の指導を受けつつも、文民統制下の彼方で静観する<自衛隊>。そして困惑する政府。

 

それぞれの組織が、それぞれの思惑を元に、てんでバラバラに活動し、自らの組織が生き残るために文字通り、命を削り闘う。

 

あり得たかもしれない可能性の戦後史とは、豊かになる高度成長期の影で、国家の治安をめぐり、過激派という餌を堂々とぶら下げることで公の治安組織たちが、闇夜で暗躍するのである。

そして、犬狼たちは反逆の遠吠えは、世界を震撼させる咆哮となり、街の辻まで木霊する。

 

★ここで注意点!この漫画は、映像作家<押井守>の成分を煮詰めて煮詰めて、稀代の漫画家の<藤原カムイ>の手によって、料理された究極の一品ですが、食べる人を選びます。

 

もうそれこそ、美少女の美の字もでない。ひたすら、権力と暴力、犬と狼、機関銃と拳銃!のオンパレード。で、〆(しめ)はオッサンです、眼鏡のオッサンが、髭のオッサンが、禿のオッサンが、デブのオッサンが、背景をバックにブツブツ言って文字の多い文脈を読む漫画です。

 

また、隠喩としての「犬」、「狼」、「人」が登場します。彼らは、「国家の番犬」つまり「犬」であり、群れてリーダーの元に集う「狼」でもある。「犬」であり「狼」。

 

しかし、国家に「犬」は必要でも「狼」はいらない。そして特機隊の忠誠心は国家ではなく、彼ら自体の組織である「狼」の群れにある。それがタイトルそのもの『犬狼伝説』そのもの。このあたりの隠喩の解釈は読者次第です、それを踏まえた上で読むと深読みの楽しさが倍増します。

 

 

こんな人にオススメ

【架空の戦後史が好きな人、銃器が重機関銃MG34が好きな人、圧倒的な権力側の暴力を見たい人、オッサンがひたすら、空に向かってブツブツいってもOKな人、破滅の美学を見たい人、押井守監督の映画パトレイバー2的な静かな戦争状況シミュレーションが見たい人】

 

 

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