TOP > マンガ新聞レビュー部 > あの夏の感動をもう一度 「金足農業」を思わせる野球...

2018年8月21日、平成最後の「夏の甲子園」が終わりました。

今年話題になったのは、春夏連覇の大阪桐蔭高校はもちろん、決勝戦でその相手となった金足農業高校。「まるで漫画のよう」と注目を集めました。

 

彼らのような活躍をもう一度味わいたい方は、川原泉先生の『甲子園の空に笑え!』や、ひぐちアサ先生の『おおきく振りかぶって』はいかがでしょうか。

 

農業高校の甲子園行きを描いた『甲子園の空に笑え!』

高校野球は、現実社会でもインターネット上でも多くの人の関心を集めます。しかし今回の夏の大会の盛り上がりが私のところまで届いたのはひとえに秋田県の金足農業高校のおかげでした。

 

それは彼らの野球のすばらしさや「全国的に名前がしれた強豪校」VS「地方の有力校」という漫画のような決勝戦を実現させたからーーではありません。(すみません)

 

私をワクワクさせたのは

   ・決勝戦に駆けつけた、即席の応援楽団
   ・勝ち続けたのにお金がなくて支援を募る
   ・農業高校が甲子園へ

というところです。

 

これで思い出したのは、川原泉先生の漫画『甲子園の空に笑え!』という作品です。

 

甲子園の空に笑え! (白泉社文庫)
著者:川原 泉
出版社:白泉社

 

『甲子園の空に笑え!』は、九州の田舎の農業高校の、部員は9人しかいない野球部が物語の中心。彼らが運命の巡り合わせで甲子園に進出し、勝ち進むという物語です。しかも監督は女性です。

 

川原先生の作風は、世間で当たり前と思われていることに疑問を投げかけるもの。

『甲子園の空に笑え!』では、熱血で戦うチームを横目に、無理せず笑って戦いぬきます。けして「将来こういうチームも出てくるに違いない」と思われて書いたわけではないでしょう。

 

もちろん部員数や練習量、選手の力には、漫画と現実の金足農業野球部で違いがあります。それでも作品発表から長い年月がたって、  少しでも似たようなところのあるチームが出てきたというのは「事実は小説より奇なり」を地でいく感じを思わせました。

 

『おお振り』の西浦高校にもチャンスあり?

そして金足農業高校の活躍で期待したいのは、ひぐちアサ先生の『おおきく振りかぶって』(おお振り)の西浦高校です。

 

 

『おお振り』に登場する西浦高校野球部は、公立高校の新設野球部です。女性の監督がメンバーを集め、全国優勝を目指します。

 

集まったメンバーは極端に自信のない投手に、シニアの著名選手など。決して全員が有名な強い選手というわけでも、練習時間や設備がすごく恵まれているわけでもありません。

 

 

それでも監督や先生の指導のもと、選手同士が絆を深め、選手としてチームとして成長していきます。

チーム内のメンバーが理解する過程で、「なぜ運動部出身者は声が大きいのか」「なぜ人は自信を持てなくなるのか」「仲間内の競争はどうあるべきか」「強さとはなにか」まで説明してくれます。

 

とにかく監督のチームマネジメントが巧みで、選手たちにはチームとしての目標を自分たちで設定させます。

レベルや意識に差があるメンバーが、それぞれ悩んで出した「全国優勝」という共通の目標。漫画としては感動的な展開でしたが、彼らはまだ地方大会を勝ち進めずにいる段階です。

私は「現実にはどうだろう」と思ってしまいました。西浦高校があるという設定の埼玉県は、作品の中で強豪の私立高校がひしめく激戦区とされているからです。

 

そこに金足農業の活躍です。

 

金足農業高校野球部と西浦高校には

 ・地元出身者の多さ

 ・公立高校

 ・何人か強い選手がいる

という共通点があります。

 
さらに西浦高校には応援団がなく、勝ち進む中で友達が「やりたい」と手を挙げてやっと結成されます。部活動のお金も十分にあるわけではなく、監督がアルバイトで稼いだお金を使っています。

 

 (好きでやっていることとはいえ、部活動の時間の長さ、監督のお金と時間のかけ方はすごく気になりました)

 

しかし今回、金足農業高校の活躍をみて「もしかして、西浦高校にもチャンスがある?」と心から思えました。なんといっても西浦高校のメンバーはまだ1年生だからです。

 

「事実は小説よりも奇なり」といい、サスペンスや事件物では創作を超えることが現実に起こりえます。

最近では将棋界で、創作世界の棋士を越えるキャラクターが出てきています。いつか現実が創作を上回り続ける日が来るのか、創作がさらに現実を上回り続けるのか。それも含めての漫画の楽しみだと、考えさせられました。

 

『おお振り』の続きを、さらに楽しみにしてくれた金足農業高校に改めてお礼を。

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