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2018年7月23日(月)漫画『あげくの果てのカノン』完結記念イベント「ハッピーエンド(もしくは地獄のはじまり)の作り方」が開催されました。

 

 

『あげくの果てのカノン』といえば、「不倫×SF」という大胆なテーマで、漫画家の押見修造先生、志村貴子先生や、作家の村田沙耶香さん、俳優の菅田将暉さん、ミュージシャンの尾崎世界観さん(クリープハイプ)など、多くの著名人から絶賛の声が寄せられた人気作です。

 

これまでマンガ新聞でも、何度もレビューで取り上げさせていただきました。

 

>>“偶像崇拝”のなれの果て『あげくの果てのカノン』

>>人を好きになるのが少し怖くなる一作『あげくの果てのカノン』

 

 

簡単なあらすじ紹介

 

ゼリー(エイリアン)襲来によって、都市機能を失い雨が振り続ける東京・永田町。
主人公・高月かのんは、高校時代から8年間、 一方的にずっと想いを寄せ続ける相手・境先輩と、アルバイト先の喫茶店で再会する。

 

 

境先輩は異星生物対策委員会、通称:SLCの特殊部隊として、最前線でゼリーと戦う日々を送っていた。怪我をするたび行われる「修繕」により、彼は少しずつ変わっていく。

 

食の好み、ホクロの有無、性格、…好きな相手。

「変わっていく人間を
 愛することができるのかー…」

既婚の片想い相手と、エイリアンが襲い来る世界で繰り広げられる一途なこじらせ系女子・かのんの物語。

 

 

 

本イベントに登壇されたのは『あげくの果てのカノン』作者の米代恭先生と、話題作『映像研には手を出すな!』作者の大童澄瞳先生です。
おふたりは「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載されており、プライベートでもお付き合いがあるとのこと。

 

米代先生の担当編集者である小学館・金城さんも加わり、終始楽しい雰囲気で行われたトークイベントの様子を、二部構成でお届けします!

 

読めないけどすごい「やばい」漫画?

ーーー『あげくの果てのカノン』完結ということで、まずは大童さんに第一巻を読んだ時の印象を聞きたいと思います。

 

大童 率直に言いますと「うわ、俺には読めねぇ!」というのが感想でした。

というのも、キャラクターの感情だとか、精神的な深い部分の掘り下げがものすごくて。

かのんの中にあるダークな感情や、ピュアすぎる部分が僕の中にもあって、そういった部分がかのんとシンクロして耐えられない!みたいな…とにかくやばい作品だなと思いましたね。

 

自分が描く漫画は割と明るくて、楽しい冒険いっぱい!のような作品なので、別の種類の作品というか。

 

 

大童 ただ、僕には姉弟がいて、僕たちが連載している「月刊!スピリッツ」の中では今これが一番やばい!ってふたりで話してましたね。読めないくせにすごいやばいみたいな…(笑)

 

米代 ありがとうございます。

 

ーーーちなみに、その感想は大童さんから直接聞いたことはありましたか?

 

米代 「読めないんだよね~」とは聞いたことがあります(笑)

あ、でも、お姉さんが「一番おもしろいって言ってたよ~」ってお話とかも聞いて、すごいありがたいなと思ってました。

 

帯コメントから影響を受け、物語を組み直す

ーーー毎回単行本が出る度に寄せられる帯のコメントも、文字数が多いといいますか、先程の大童さんのように熱量がすごかったように感じます。

 

金城 米代さんはどのコメントが嬉しかったんですか?

 

米代 みなさんのコメント全部が嬉しいですね。自分でも、できるだけキャラクターの行動の感情を捉えたいとは思っていて。めちゃめちゃ考えるんですけど、それでもやっぱり取りこぼしている部分があったりして。

 

そういう時に帯コメントを読むと、この方じゃなきゃこの表現ってできないなとか思ったりして、コメントを下さった方それぞれが捉えるキャラクター像から影響を受けて、また改めて自分の中でも物語を組み直したりしました。本当にありがたいです。

 

大童 そうですよね。人からコメントいただいたりとか、感想をもらったりすると、自分の作品でも理解が深まるのは感じます。

 

ーーーこの帯コメントをいただく方は、どのように決めていたんですか?

 

金城 「村田沙耶香さんの作品を読んでいる人に(カノン)を読んでもらいたい」っていうのは、米代さんと前から言っていました。なので第1巻の帯コメントをお願いしました。

 

あげくの果てのカノン_1巻帯01

 

米代 私も金城さんも、村田さんの作品の『しろいろの街の、その骨の体温の』が大好きで、最初の方の打ち合わせの時に「村田さんはすごい」「こういう話を描きたい」って話をずっとしていたんです。

帯コメントをいただいたり、トークイベントをさせていただいたり、村田さんには本当にお世話になっています。

 

 

金城 押見修造先生も、志村貴子先生も、米代さんが大好きな作家さんなのでお願いしました。

 

第2巻の時は、さすがに毎巻3人も帯コメントをいただくのは大変すぎるなと思っていたのと、村田さんの『コンビニ人間』が芥川賞を受賞されて盛り上がっていたので、今再び!と思ってお願いしました。

 

そのあと第3巻の打ち合わせをしているときに、デザイナーの川谷さんから「やっぱり一巻のときくらいコメントがほしいな」って言われて…一生懸命お願いできる人を探していました(笑)

 

あげくの果てのカノン_2巻帯

 

大童 文字数でみると、2巻が村田さんひとりだとは思いませんでした(笑)

 

金城 川谷さんの技術ですね(笑)コメントの文章量が多いなかでも、重版のお知らせを入れたり。

 

大童 「SF」の文字に「えすえふ」ってルビ(読みがな)振ったり、すごいですね。

 

金城 そうなんですよね。SFにルビを入れたり、こんなエグい恋愛漫画にハート入れたり。このあたりが川谷さんの奇妙さというか、なんだか怖い人だなと思うんですけどそこが良くて(笑)

 

ーーー俳優の菅田将暉さんにもコメントもらってらっしゃるんですね。

 

あげくの果てのカノン_5巻帯

 

米代 菅田さんの時は、本当に直前の直前にお願いしてしまって…。

 

金城 あるスジから、菅田さんも「おもしろい」と言ってくださっているのを聞いて、あるスジの方からお願いしていただきました。

 

大童 ありますよね、あるスジ(会場一同笑いにつつまれる)僕も漫画家になって初めて知ったんですけど、本当にあるんですよ、あるスジ。

 

金城 様々な人から協力を得て、無事『あげくの果てのカノン』は完結に至りました。

 

米代 すごい綺麗にまとめましたね、無理くり感が…(笑)

 

米代先生の感想「どんだけ器用なんだコイツ」

ーーー次は米代さんに大童さんの漫画『映像研には手を出すな!』の感想を伺えますか?

 

米代 漫画家の友人経由で初めて大童さんにお会いしたんですけど、その時に「今度連載始まるんですよ」って言って、連載前の漫画を見せてくれて。あまりにも絵が上手いんですよ。

 

全部読んでみると、物語の中の設定部分とかがすごくて、私はあまり設定が作れないので、自分にできないことをやっていてすごいと思いました。でも2巻になると、感情的にすごいエモい!みたいな部分もあって「どんだけ器用なんだコイツ」みたいな感じで…すごい好きです(笑)

 

大童 ありがとうございます(笑)

 

ーーーちなみに『映像研には手を出すな!』のキャラクター3人のうち、どの子に共感するとかはありますか?

 

▼『映像研には手を出すな!』メイン3人▼

 

 

 

米代 金森さんが一番好きですね。

クリエイターを目指す人は、みんなこの漫画を読んだほうがいいって思ってるんですけど、浅草さんやツバメちゃんは趣味でアニメ制作をやっていて、こういう人ってすごい多いと思うんです。

 

でも、金森さんの視点がこの作品にあるかないかで、趣味を商売にできるのかっていうのがかなり変わってくると思います。

だから金森さんみたいな人が自分の中にいてほしいなってすごい思いますね。私も昔趣味から商業用の漫画を描くときに、ビジネス論とか読んでたりしたことがあったんですけど。

 

大童 へえー!そうなんですか。

 

米代 でも最近全然ビジネス関係の知識を深めたりができてないので、金森さんみたいな精神を忘れかけていて。

そういった部分を思い出させてくれるので、やっぱりすごい漫画だなと感じます。

 

ーーー米代さんから自分の漫画の感想を聞いてみて、どうですか?

 

大童 恥ずかしいですね(笑)普段あまり意識せずに、自然体で漫画を描いてるに近いんですけど、改めて言われるとそうなのかなって思います。

 

米代 大童さんと話していると、この3人のキャラクターは大童さんが分裂してるなってイメージがすごくあります。

 

大童 そうですね。『映像研には手を出すな!』の中には、設定や外で遊ぶことが好きな女の子と、商売とお金が大好きな女の子、アニメーションの動きが好きな女の子の3人が出てくるんですけど、それぞれのキャラクターの特徴が自分の中にあるなっていうのは感じます。

特に商売・お金大好きの部分は僕そっくりだなって(笑)

 

米代 初めて会った時とかも、Twitterの運用方法を教えてもらいました。

 

大童 僕なりの運用論がありまして(笑)

 

プライベートで山菜採りに行く仲良し

ーーーおふたりはプライベートでも親交があるんですよね?

 

大童 ありますね、歳が近いこともあって。

 

金城 同じ「月刊!スピリッツ」で連載されていますしね。

 

ーーー漫画家さんたちは、普段からそういう集まりとかがあるんですか?

 

大童 僕に関しては、漫画家以前に友だちがほとんどいなかったので、漫画家つながりで知り合いになって、やっと友だちかー…友だちできた!みたいな感じでしたね。

 

(会場、小さな笑いが起きる)

 

金城 『あげくの果てのカノン』の第1巻が出た時に、米代さんと村田沙耶香さんでトークイベントをしたんですけど、そこにファンとしてサイン会の列に並ばれてましたよね。

 

大童 あ、はい。

 

金城 それで米代さんから「あの人が大童くんで今度「月刊!スピリッツ」で連載が始まるただの天才です」って紹介されたことがすごい印象的で覚えてます(笑)

 

大童 ありがとうございます(笑)

 

ーーー噂によると、山菜採りも一緒に行かれたんだとか…。

 

米代 山菜採り、しましたね(笑)金城さんに「図鑑の編集さんと山菜採りに行くんだけど取材に来ない?」って誘われて行くことになったんですけど、その図鑑の編集さんがそのあたりの草花の名前を全部言えるようなすごくおもしろい人で。

私のイメージ的に、大童さんも同じタイプの人間だと思っていたので…。

 

大童 僕が「火のつきやすい木の皮はこれです」とか言うタイプの人間なんですよね。

 

米代 このふたりを会わせてみたらおもしろいかなと思って誘いました(笑)

 

その時に採った山菜の写真をいただきました

 

ーーー山菜採りのなかで、お互いの普段の作品とのギャップみたいなものは感じましたか?

 

米代 大童さんの場合、普段から探索みたいなことしてるんだろうなと思ってて、毎回大きいリュックとか背負ってくるんですよ。サバイバル得意そうだなって。

『映像研には手を出すな!』でも探索のシーンが結構あって、こういう日常的なことから漫画ができるんだなっていうのがわかっておもしろいです。

 

 

大童 そうですね。でもインドア派みたいな部分もあるので、アウトドア好きのインドア派です。僕はカノンを描いているからといって米代さんに「普段から不倫とかしてるんだろうな」って印象は抱きませんでした(笑)

 

(会場、爆笑が起こる)

 

米代 不倫してないしね(笑)

 

大童 山菜採りの時の米代さんと、作品のテーマのギャップはあって、おもしろかったですね。

 

米代先生=魔性の女?

ーーー米代さんのなかには主人公のかのんらしさ、みたいな部分はありますか?

 

大童 かのんらしさ…、ありますね、この人は魔性だって思ったことあります。

今回のコラボイラストを描く時も、僕が構図をとって「こんな感じの絵でお願いできますか」って米代さんに送ったら「めっちゃええやん」って褒められて…、飴で僕を動かすのか…!って(笑)

 

トークイベント記念のコラボイラスト

 

米代 普通のコミュニケーションですよ(笑)

それで言うと、担当の金城さんがすごい褒めてくれるタイプの人なので、流れみたいなものができてますね。

 

大童 今日みたいに自分の漫画をちゃんと読んでくれて「自分はこうだからこう思った」みたいな意見を言ってくれるので、すごく嬉しくて。素で人を動かす力を感じます。

 

ーーーもしかして、境先輩っぽさもあったりするのでしょうか?

 

米代 境先輩も自分が作り出したキャラクターなので、全くないかと言われたらそんなことはないですね。

 

大童 自分から出てくるキャラクターって、やっぱり何かありますよね。

 

米代 自分のなかにある要素じゃないと、ちゃんとキャラクターが動いていかないから、どうしてもどこかを自分に近づけてる部分があるかもしれません。

 

 

 

ここまでは、米代先生と大童先生の仲の良さや、多くの人に支えられて完結した『あげくの果てのカノン』の裏話をお聞きしました。

 

このあとは、いよいよ完結時のエピソードや最終話の意図についてが話されます。

引き続き、レポート後半もお楽しみください!

 

 

>>不倫SF漫画の結末はハッピー?バッド?『あげくの果てのカノン』米代恭×『映像研には手を出すな!』大童澄瞳トークイベント【後編】

 

 

(取材・編集/駒村悠貴

 

 

あげくの果てのカノン 1 (ビッグコミックス)
著者:米代 恭
出版社:小学館
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出版社:小学館
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