TOP > マンガ新聞レビュー部 > 愛も生も死も管理される未来『きみを死なせないための...

SFとは未来を想像する力だ

 

人類が地球を飛び出し、宇宙空間の中に作り上げたスペースコロニーの中で生きる世界。

全ての人間の情報が管理・監視される世界。

生命が人工的に生産され、遺伝子レベルで差別される世界。

 

SFで良く描かれるこういった設定を、もうただの空想の産物と笑う人はいないだろう。

 

 

ただ、そんなSF作品の多くがディストピア、つまり差別や抑圧によって自由を無くした対価として手に入れた、平和的管理社会の危険性について描いている。

そのことを、ただ物語を面白くするためのエンターテイメント性だと断じるのは危険だ。

 

未だ想像の中にしかないまだ見ぬ技術とは異なり、人の感情や人間性による差別や争いは、人類の歴史から1秒足りとも離れることなく常に傍にあった事実だからだ。

 

だからこそ、想像の力でより具体的な未来の姿を提唱してくれるSF作品は面白く、そして恐ろしい。

この漫画『きみを死なせないための物語』もそんなSFの名作である。

 

 

吟鳥子『きみを死なせないための物語』

 

それは誰のための祝福か?

 

人類は地球近くに浮かぶコクーンと呼ばれる人工スペースコロニーに住むようになり、そこでは遺伝子の優劣によって価値が決められ、自由な思想も恋や愛も非合理的で猥雑なものとされ、生まれた時から他者と話したり接することすら管理されていた。

 

そんな中、突然変異でごく一部の人類の中に、異常なほど長命な人間が生まれてくる。

 

彼らはネオテニイと呼ばれ、極めてゆっくりと身体的成長を経ながら(つまり若い時間が長い)何百年も生きられることから、神からの祝福としてヒエラルキーの最上位に置かれていた。

 

一方で、胎児の時に身体の細胞が変異し、まるで植物のように光合成をするようになる代わりに、わずか十数年で枯れて死んでしまう緑人症(ダフネー症)という病にかかる人たちも現れる。

緑人症の人々は「これは呪い」だと蔑まれ、人としての扱いすらされなかった。

 

 

自由な思想も許されず、本すらも徹底的な検閲を受けたものしかなく、友情も恋愛感情も忌避されるということは、もはや人類は優秀な遺伝子を残すためだけの道具か家畜のようなものだ。

 

ただ、道具も家畜も、それを得ることで得をする存在が必ずいる。

むしろ得をするための手段として、道具や家畜は作られる。

 

ならばこんな世界を作った、得をする者たちとは一体何者なのか?

そして、長命な種と短命な病という相反するイレギュラーな存在は、はたして偶然生まれたものなのか?

 

宇宙という死の世界の中で繭に閉じこもって生きているのであれば、むしろ食糧問題を解決できるダフネー症は進化のように思えるし、

何百年も生きる種などは、生命のサイクルを逆に滞らせる存在になりかねない。

 

なのに、なぜネオテニイは祝福され、ダフネー症は呪いと呼ばれてしまうのか?

そこにも何者かの意図が隠れているように思えてならない。

 

この物語が、今後どのような謎を紐解いてどんな未来の姿を私たちに想像させてくれるのか。

少し恐ろしさも感じながら、この続きを楽しみに待ちたいと思う。

 

 

>>『きみを死なせないための物語』をDMM電子書籍で読む

 

きみを死なせないための物語(1)(ボニータ・コミックス)
著者:吟 鳥子
出版社:秋田書店
販売日:2017-04-14
  • Amazon
  • Amazon

この記事に類似する記事

▶マンガがお得に買えちゃう情報満載!

人気のコメント

新着コメント

ログインして
すべての人気のコメントを見る

ご自身のTwitter、Facebookにも同時に投稿できます。

《マンガ新聞》公式レビュアーの方はログイン
 ※新規ゲストのログイン機能は準備中となります

利用開始をもって
《利用規約》《個人情報の取扱について》
同意したものとみなします。
ログインメニューに戻る
ログインメニューに戻る
パスワードを忘れた方は
《パスワード再設定》を行って下さい。
ログインメニューに戻る