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『響〜小説家になる方法〜』に見る、イノベーターが世界を壊す理由

何を隠そう、若い頃は小説家を目指していた私は、今となってもこうして日々文章を書き連ねている。 まあ、まだその夢は諦めていないわけだが、一昔前の紙媒体でしか出版できなかった時代と違い、今ではこうしてネットで自由に表現できる場が整ってきたので、非常に素晴らしい時代になってきたなぁ……などと思う。 先日、お笑い芸人から初の芥川賞を受賞した又吉氏の『火花』も気になっているわけだが、それ以外で最近特に気になっているマンガが、ビッグコミックスペリオールでも連載されている。 それが、『響〜小説家になる方法〜』だ。

物語の概要

響~小説家になる方法~(1) (ビッグコミックス)
著者:柳本光晴
出版社:小学館
販売日:2015-05-15
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いよいよ小説家がマンガになる時代になってきたのか……と思いつつも読んでみた。 正直絵柄はまだイマイチだが、それほど気になるものではない。 それよりも、この物語の主人公である『響』という女子学生のキャラクターが非常にインパクトがあって良い。 世の中の常識に縛られず、その感性をそのまま表に出して暮らしながら文章にしたためるという、小説を書くことが生きる証のような性格のため、気に入らないことは気に入らない、と日常生活においてトラブルばかり起こしている。 

天才が巻き起こす数々の嵐

実際の小説の中身は物語には出てこないのだが、その才能は読んだ者全てを圧倒し、文学界をひっくり返すような作品であるとして、周囲全てを巻き込んで旋風を巻き起こしていく。 それは女性編集者を虜にして、連絡先も分からない作者を探し求めるように、同世代の小説家の娘や売れない新人小説家に夢を諦めさせ、泣かず飛ばずの落ち目の小説家の自信を打ち砕くような、圧倒的な才能だ。 これらが表現されていく過程において、最も印象に残ったのが次の場面だった。

イノベーターという存在の本質

かつては新人賞を獲ったことのある女性小説家が、今では図書館司書として地味な暮らしをしながら何度か新しい作品を作っている。 だが、学校の文化祭のために作ったヒロインが文集に書いた作品を読んで、「そのあまりの才能にとうとう引退を決意する」……という部分だ。 注釈のように、そこへ彼女はその後、結婚して主婦となり幸せな家庭を築いた……ということが描かれている。 このことが実は、圧倒的な才能である『イノベーター』の本質を表していると私は思った。 ……つまりイノベーターとは、世界の救世主でもなんでもなく、身近な関係者にとってはただの『破壊的革命家』なのだ。

イノベーターは既存社会を崩壊させる

響~小説家になる方法~(9) (ビッグコミックス)
著者:柳本光晴
出版社:小学館
販売日:2018-05-02
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その才能を目の当たりにした時、人は「こいつには敵わない」という圧倒的な壁を感じ、その世界から去っていく。 この事実こそがイノベーションなのである。 今世界では、この『イノベーション』が持て囃され、我こそはと皆がこぞってコミットし、社会もそれをお祭りのように持ち上げている。 ……だが、その本質は上記にも書いた通り、絶望的なほどにそれまでの社会を破壊し尽くしていく。 その先にあるのは、「敗北」だったり「失業」だったりという残酷なまでの事実に気づいていない人が多数だろう。 それに気が付いた時にはもう既に遅く、持ち上げていた自分自身の足場がボロボロに崩れている時かもしれない……。 

まとめ 

ちなみに、そんな天才少女による無双物語でありながらも、時折差し込まれるツンデレラブコメ展開も結構好きな場面なのだが、この天才と凡人を比較した時の、それぞれの側での心理描写もなかなか見事で読み応えがある。 最近会って、天才を目の当たりにしている方の一言が見事に心に残っている。 「天才は、制御できない。自分のしたいことだけをして、突如ある時、革命的な結果だけを残してまた去っていく」 この事がよく分かる物語である。そして私は、そういう天才たちに自由に暴れてもらって、この世界をもっと面白くしていって欲しいと思う者の一人である。そうした環境が作れるよう、これからも取り組んでいきたいものだ。 

 

(文:住田 広樹)

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