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我らコンタクティ (アフタヌーンKC)
著者:森田 るい
出版社:講談社
販売日:2017-11-22
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誰に命令されたわけでもなく、誰かから頼まれたわけでもない。それが好きだからやり続けるひとたちがいる。起業という形を取ろうが、副業でやろうが、家族がいようがいまいが関係ない。そこには「やらない理由」がない。

 

そんな人間を見て、さも自分の力では到底覆せないかのように「やれない理由」を立て続け、「やらない自分」を正当化していく。いつの間にか、やりたいことはやりたかったことになり、やりたかったことは記憶の奥底に封印される。

 

そんな日常にありふれた、ちょっと生きることがつらくて心が弱くなっているひとにとって、やりたいからやっている人間はまぶしく見える。もし、自分が少しでもかかわることができたら、傍にいられるのであれば、いつの間にか彼や彼女の夢は自分のものとなり、そこにはコミュニティが生まれていく。

 

『我らコンタクティ』は、明るく元気でクラスの女子のリーダーであった椎ノ木カナエが、会社の社長からパワハラとセクハラを受けるスナックの一場面から始まる。そしてふと思う「会社 辞めちゃおっかな」と。

 

その帰り道、変わり者のもやしっ子で、友達の一人もいなかった同級生の中平かずきに声をかけられる。多機能ふでバコの消しゴムのところにメダカを入れて登校し、ボタンを押したらシャっと出てきて、プカーってなったそのメダカの腹、いまだにカナエのトラウマとなっている。

 

そこで見せられたのがロケットエンジンの燃焼実験。それは兄が経営を引き継いだ町工場の一角で、工場で働きながらずっとかずきが作り続けてきたロケットの一部だった。なぜ、かずきはロケットを宇宙に飛ばそうとしているのか。それは小学校3年生のとき、学校の体育館で見た映画を宇宙で公開したい。それが動機であり、かずきのやりたいことであり、かずきがやると決めたことだ。

 

そんなかずきに、カナエだけでなく、ずっと心を通じ合わせることができなかったかずきの兄や、お客からもらった一万円札を燃やさないではいられない「みず色クラブ」店長の梨穂子さんが巻き込まれ始める。

 

技術的にはロケットの打ち上げは問題ないとするかずきも、打ち上げのための法的な知識や準備はまったく考えていないようだ。ここらへんも「やる」と決めて、一直線に走る人間っぽいところだ。やると決めているので、「やっていいのかどうか」「どうしたらやることに許可を得られるのか」という人間社会のルールには無頓着だ。なぜなら、「やる」と決めている人間だからだ。

 

かずきの周りに出来たコミュニティが動き、打ち上げの申請が進み、資金が集まって来る。しかし、警察の立入検査でノーがでる。個体燃料で、民間人が、太陽系外にチャレンジすることや、木星をスイングバイしたのちに土星でもう一度スイングバイを計画していること、そのロケットの一段目の秘密など、大きな期待に対する「不許可」の回答。

 

それでもロケットの発射ボタンは押され、ロケットは宇宙に飛び出していく。そして・・・

 

一巻完結型の『我らコンタクティ』は、心の奥底に押し込んだやりたいことを持つひとや、いま少しだけ心が弱っているひとにとっても、大切なものは何かを思い出させてくれる一冊である。

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