TOP > スポーツ > スターに出会って苦しい普通の人は、田中・手嶋両先輩...

新年度も1か月が過ぎました。環境が変わるなどし、新しい人と出会うことになった人は多いのではないでしょうか。多くの人と関われば関わるほど、自分の力のなさや小ささを実感し、落ち込むこともある。私自身はそんな普通の人の一人です。
 
現実でもマンガでも、すごい活躍をしている人をみると、「それに比べて自分は」とぐずぐず悩んでしまう。しかし最近のマンガはそんな人を見捨てない。こんなフツーの人が目指すべきは、『ハイキュー!!』の田中龍之介 や、『弱虫ペダル』の手嶋純太といった意思と努力のキャラクター。彼らが、今、活躍の場を広げています。
 
物語の登場人物、特に活躍するキャラクターといえば、「すごい能力を持つ人」「ポテンシャルがある人」「才能を受け継いだ人」。およそ読者であるフツーの人からは、かけ離れた存在であることが多い。
 
もちろんそういった彼らが、困難を乗り越える姿に感銘を受けると同時に、少しでも彼らに近づこうとして力がわいてきます。
でも心の中ではこんな考えがふとよぎってしまう――「やっぱり彼らは、普通の人にはない力を持っているから活躍できるのでは」「自分とは違う過程を経て成長したから主役になれるのでは」、と。
 
  
特にマンガではこの傾向が顕著です。『ドラゴンボール』の孫悟空は戦闘民族のサイヤ人。競技カルタの少女マンガ『ちはやふる』で活躍するには、歌を読み上げる声を聞き分ける力が求められます。
 
彼らの活躍を見ていると「自分もこうなりたい」と前を向こうと思う一方で、「どこまで行っても自分には才能や魅力がないから無理」という考えから逃れることができず、足を止めてしまいます。
 
現実社会でも、まるでマンガや小説、映画の主人公になりそうなキラキラ光る人材は無数にいます。そういう人をみると、圧倒され、まるで自分の居場所がないように感じられる。そんなときマンガのなかの誰に心を寄せればいいのか。それが、「普通」から一歩一歩進み続けるキャラクターです。
 
※もちろん以下で触れるキャラクターも現実の普通の人からすれば距離はあります。あくまで作品中の相対的なものです。

「平凡な自分に下を向く暇はない」と言い切る田中先輩

例えば高校のバレーボール部を舞台にした『ハイキュー!!』の田中龍之介先輩。
 
ハイキュー!! 30 (ジャンプコミックス)
著者:古舘 春一
出版社:集英社
販売日:2018-02-02
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田中先輩は主人公の日向翔陽らの所属する烏野高校の2年生で、日向らからは「田中センパイ」と慕われます。物語の最初では、部活に入ったことがない日向や中学時代うまく部活になじめなかった影山飛雄に、「いいセンパイ」としての顔を見せ、2人を部活に巻き込んでいきます。

 
しかし物語が進むにつれ、試合の華々しい活躍では日向や影山に追い抜かれていく。
 
さらに同学年には、西谷夕というリベロの「天才」がおり、幼なじみの女子バレー選手も、背の高さというポテンシャルを持つ。実際田中先輩はインターハイの舞台で、強豪高校との試合中、「自分は平凡なんだ」という考えが頭をよぎります。
 
もちろん、田中先輩は烏野高校のコーチから、メンタルの強さなどで次期エースとして認められている選手です。私を含む読者から見るとすばらしい選手です。
 
フツーの人ならここで心が折れるところ。そしてネガティブスパイラルに突入します。
 
しかしここが田中先輩の違いであり強さなのでしょう。「ところで平凡な俺よ 下を向いている暇はあるのか」――こう心で思いながら、セッターに対して自分に向けてボールを回してほしいと呼び込みます。
 
この思いからは「普通の存在だからこそ、前を見て進み続けなければならない」という強い決意が感じられます。
 
 
実際、ずば抜けた能力や才能を大人になってから取得するのは難しい。でも「前を向こう」という決意は、いつでもできること。周りと自分を比べて落ち込んでしまう読者が『ハイキュー!!』でまず見習うべきは、強力なサーブが打てる及川徹でも、セッターの天与の才を持つ影山飛雄でも、大きな体を持つアタッカー東峰旭でもなく、常に前を向く田中先輩の姿勢ではないでしょうか。
 
そして田中先輩のような普通の人の代表が登場することは、異次元スターを生み出してきた少年マンガが、改めて普通の人のすごさや踏ん張りを描き出したのだとも言えます。「普通の人だって日常生活を平和に過ごしているだけではない。活躍の舞台に上がれるのだ」と。
 
思えば、野球マンガ『おおきく振りかぶって』の武蔵野第一高校には、 加具山直人という努力型の選手が出てきます。才能も実力もある後輩をみて、一度は野球をあきらめそうになりますが、後輩と話す中で「 恥ずかしくても一生懸命やっていいんだ……。」という考えに至ります。そう、好きなことは一生懸命に努力していいのです。

「努力で登る」手嶋先輩は確信が持てるまで努力を続ける

こうしたキャラクターが活躍するのは『ハイキュー!!』に限った話ではありません。
 
高校生のロードレースを舞台にした『弱虫ペダル』では、「超努力継続型」ともいえる総北高校の手嶋純太選手が活躍しています。
 
弱虫ペダル 38 (少年チャンピオン・コミックス)
著者:渡辺 航
出版社:秋田書店
販売日:2015-02-06
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『弱虫ペダル』を読み続けている読者の方ならご存じかもしれませんが、当初手嶋は、インターハイの出場選手を決める総北高校の部内レースで、主人公の小野田坂道らのでライバル役として登場。主人公含め1年生組に負けてしまい、手嶋のあこがれの先輩とのインターハイ出場の夢は絶たれます。
 
物語はすっかりインターハイでのライバル校、箱根学園高校との戦いに移り、手嶋ら2年生は出場選手の補給係としてしか出てきません。
 
しかし、手嶋らが3年生になると手嶋は部長に任命され、再びインターハイ出場選手を決める部内選考レースに出場。ここで壁となった同学年の有望選手との戦いを制し、見事インターハイへの出場を決めます。そしてインターハイの舞台で戦うのは、前年の試合で2位だった箱根学園の真波山岳。
  
奇しくも手嶋は常に才能あふれる選手と戦っていることになるのです。
 
 
凡人ならこれまた「負けても仕方がない」と思うところ。正直読み手である私のほうがつらい。
 
  
しかし手嶋の心に浮かぶのは「オレは平凡!!!目立った才能もセンスもねえ けど 努力だけはしてきたァ!!」という自分の積み重ねた努力への信頼。きっと相手選手も自分と同じもしくは自分以上に努力していることを知っている。
 
それでもギリギリの場面でこう思えるのは、自信を持てるほど努力してきたと思い込めるから。ここまで自分の自信とできるほど努力を重ねたという確信をもてることに涙が出てきました。
 
もちろんスポーツの世界では、天才たちも努力を続け、油断をすることはほとんどありません。特にスポーツマンガでは、最も強いのは努力し続ける天才。でもそうした競争環境だからこそ、凡人こそ進み続けることをやめてはいけないのではないでしょうか。田中先輩や手嶋先輩の姿からは、「続けることも才能だ」というメッセージを感じられます。もちろんこれはスポーツには限らないのでしょう。
 
 
努力の継続は、ある種根性ともいえるもの。『ハイキュー!!』に登場するキャラクター、孤爪研磨に言わせれば「根性とは最終奥義 精神と体力をきたえてきたものが満を辞して発動できるもの おれには仕えない必殺技」だそうです。
 
自分の周りのすごい人、ずばぬけている人を、妬んでも羨んでもいい。でも、それと同時に田中先輩や手嶋先輩のように、自分自身が前を向いて進む努力も忘れないーー多くの普通の人に届いてほしいメッセージです。
 

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