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世界は寒い 1 (フィールコミックスFCswing)
著者:高野雀
出版社:祥伝社
販売日:2018-03-08
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いつの時代も、10代思春期の子どもたちの「こころ」はわからない。親や教師は日常の言動や態度から、研究者や評論家はデータや観察を通じて、彼らや彼女らのことを理解しようとする。そんな大人に対して、彼らや彼女らは本心を見せるだろうか。

 

私たちの国では、10代で命を落とす子どもたちの死因は「自死」だ。生への希望すら与えられない社会において、昨年は座間の事件がクローズアップされた。それを機にSNS等を活用した相談事業が国の施策で行われ、特にLINEを使った相談が広がった。匿名性の高さからか、さまざまな世代が誰にも言えない相談をスマホの画面越しに訴えた。

 

筆者は中高生を中心とするLINE相談の現場にいたが、そこには親や教師はもちろんのこと、友人や身近なひとには相談しようもないようなことや、目の前で言われたら返答に詰まるようなものが散見された。

 

『世界は寒い』は、まさに女子高生の「こころ」をのぞきみるような、彼女ら自身も日常では言葉にし得ない気持ちを引きずりだす。それは偶然にも手にした一丁の銃と6発の弾で。

 

彼女たちはここかしこで自然に、しかし過激な発言を無意識でする。

 

「気に食わない奴らみんな撃ちたいな!」

「殺したい奴なんかくそほど居るもんね」

「殺したい奴が居ない人間なんか居ねえだろ?」

 

これまでそれぞれの女子高生が開かないようにしてきた「パンドラの箱」を開けてしまう鍵としての銃。

 

「世の中 邪魔な奴が多すぎる」と、すべての人間を低俗化して承認欲求を満たそうとする女子高生も、部活で身体を壊して目標がなくなってしまった女子高生も、父親が突然目の前からいなくなり貧困生活に陥った女子高生も、手に握った弾の使いどころを意識せざるを得ない。

 

男子から絶大なる人気を誇り、同姓から羨望の眼差しで見られる女子高生も、外見がよく頭脳も明晰な(少し身体の弱い)女子高生も、独特の感性で世界の混乱をミクロとマクロで願う女子高生も、誰かを殺せる手段を手にしたことで、これまで知り得なかった自分自身と向き合い、葛藤することとなる。

 

グループとなって楽しそうにしている女子高生も、勉強や部活に熱中している女子高生も、友人や家族に恵まれている女子高生にとっても、その実、この『世界は寒い』のだ。ここには親にも教師にも、恋人や友人にすら見せることのない、いや、むしろ絶対に見せないようにしている姿と「こころ」が描かれている。

 

つまり、女子高生でない人間が彼女らを理解しようとするとき、そこに見えているものや聞こえていることで彼女らを判断してはならず、かといって彼女らが本心を語ってくれるとも期待できない。しかしながら、彼女らには彼女らの世界観の中で、漠然とした不安や葛藤、行き場のない怒りを持って、この社会の中で生きている。

 

女子高生のパンドラの箱を開けたいのであれば『世界は寒い』を、勇気をもってめくってほしい。

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