TOP > マンガ新聞レビュー部 > 何でも夢を叶えてくれるホリエモンになる方法が10年...

昨年、堀江貴文著『多動力』(幻冬舎)がベストセラーとなり、先日『マンガで身につく 多動力』(幻冬舎コミックス)も発売された。

ぼくは、昨年の12月まで、渋谷にある小さな書店で働いていたのだが、『多動力』にはほろ苦い思い出がある。

近刊情報を見て、この本は売れるに違いないと思ったまでは良かった。多動力に備えて、書棚の分類項目に「ホリエモン」を作った。そして、『多動力』をどのあたりに並べておくかも考えていた。

 

しかし!!『多動力』が届かない!!

 

届くのを待つ間、その間、お客様から『多動力』はないのかという問い合わせが何度もあった。

 

「うーん、人気みたいで全然届かないんですよね……」

 

などと言いながら頭を掻いた。ベストセラー本は、大型書店に優先的に配本されることが多いため、どうしても後回しになってしまうのだ。想定以上に売れたので冊数が揃っていなかったのかもしれない。

 

というわけで、虎の子『多動力』は少し遅れたが「ホリエモンコーナー」は好調であった。

 

不思議なものでコーナーにならぶ「ホリエモン本」は満遍なく売れていく。手に取る人も多い。どうしてなのだろうか。

 

知名度が高いからだろうか?

 

そうではないはずだ。誰もが知っているテレビタレントの本であっても売れるとは限らない。

 

楽してお金が稼げるようになると思われているのだろうか?

 

それも違うだろう。お金の儲け方については数多の本が出ている。もっとダイレクトに稼ぎ方について書いてある本もあるからだ。それに、ホリエモンは楽しているイメージがあまりない。大変なことばかりしているように思える。

 

というわけで一体どうしてホリエモンコーナーの本が売れるのか。最初はわからなかったのだが、次第にわかってきた。これである。

 

 

 

――空を自由に飛びたいな。

 

「はい!宇宙観光事業!」

 

 

――スポーツをもっと楽しみたい。

 

「はい!Jリーグアドバイザー!日本ゴルフ改革会議委員もあるよ!」

 

 

――もっといろんな人と出会って刺激的な毎日したい。

 

「はい!堀江貴文イノベーション大学校!」

 

 

――うまい飯。

 

「はい!WAGYU MAFIAとTERIYAKI!」

 

 

ホリエモンの不思議なポッケには夢が詰まっているのだ。冷淡なビジネスマンではなく、ワクワクしながら夢を語る人だから、非常に印象が良いのだ。

 

ホリエモンという名前を最初に聞いたのは、思い出してみると2004年頃であった。あの時、世間にはIT起業家というものが存在することを知った。

 

突然現れた堀江貴文氏が、近鉄バッファローズを買いとろうと名乗り出たのであった。その翌年には「ニッポン放送買収計画」があった。そして、衆議院選挙への出陣である。


堀江貴文さんは、かなり初期の頃から、テレビでもホリエモンと呼ばれていたように思う。

 

国民的キャラクターをもじった愛称で呼ばれたあたりから運命は決まっていたかもしれない。ホリエモンという存在が、いつしか人々に愛されるようになるということである。

 

当時、テレビのワイドショーや週刊誌には、堀江さんをはじめとしたIT起業家の華やかな暮らしぶりが、斜に構えた視点で紹介されていた。

 

テレビ局の買収を目指していることが報じられてからは、まるで社会の敵であるかのように扱われることもあった。

 

わざわざゲストに呼んでおいて、嫌な質問ばかりするだけの救いのない番組を何度か見たことがある。くだらない質問に対して不機嫌になる堀江貴文氏を写すことだけを目的としているような番組である。

 

マスメディアには公平性がないということを、我々の世代は強く学習した。その結果が、現在のメディア不信へと繋がっているとぼくは考えている。

 

ジャーナリズムであるならば、もっと違うアプローチがあったはずだ。あの時見たものは魔女裁判であり、アジテーションであり、ヒステリーであった。

 

ぼくが子どもの頃は、テレビには絶対的な権威があった。小学生の頃、友達に「これは正しいよ!だって、テレビで言ってたから!」と言われたことを鮮明に覚えている。

 

ぼくはテレビが間違っていると言ったが、テレビが間違っているわけがないと強く言い返された。そういう時代であった。

 

その絶対性が揺らいだのである。ホリエモンが、権威をぶちこわしたのだ。それは非常に痛快なことであった。ぼくは密かに応援していた。プロ野球も、放送局の時も、選挙の時も。

 

そう、ホリエモンは総選挙へも出馬した。ぼくは、その時、心から応援した。頭を下げて、握手して回る堀江貴文候補を探していた。あの姿には胸を打たれるものがあった。

 

一時は傲慢な悪の権化で金の亡者として取り上げられていたのに、次の瞬間には国民の代表者を目指している。どういう人なんだろうか。

 

疑問ばかり湧いてくる。どうして国会議員を目指したのだろうか。ホリエモンは衆議院議員という権力が欲しかったのだろうか。バッジをつけて自分を膨らませたかったのだろうか。当時はわからなかった。

 

そして、惜しくも落選した後、起訴から逮捕、収監に至るのであった。

 

ああ、無謀な挑戦であった。やはり高き壁は越えられない。古い世代が作った日本というシステムは堅くて高い壁となって、新しく生まれた卵を粉々にしてしまう。

 

傍観者であるぼくは思っていた。どうしてそんなに非効率的なことをするのだろうか。国家と戦ってもしょうがないし、世間に波風を立てても潰されるだけだ。

 

お金は稼げても、人から憎まれたら幸福が逃げてしまう。ほら、案の定……。

 

自由気ままにやりたい放題していたホリエモンは逮捕されてしまった。これで終わったとぼくは思った。

 

しかし、不思議なポッケを持ったホリエモンにとっては、収監など序章に過ぎなかったのだ。

 

今の活躍を見ていると、10数年前よりもはるかに活き活きしているように見える。刑務所に収監されたことは、普通の人にとっては大きな傷になるはずなのだが、ホリエモンにとっては、大きくプラスになったようだ。

 

ホリエモンはある発明をした。それが「かけ算」である。『多動力』で語られる<三つの肩書きをもてばあなたの価値は一万倍になる>である。

 

ああ、そういうことだったか。腑に落ちた。謎が解けた。『多動力』によって、これまで抱えていたホリエモンの行動規範がようやくわかったのである。

 

<三つの肩書き>についての詳しい説明は、マンガ版にも、書籍版でも紹介されているので是非読んで欲しいのだが、ここでもざっくりと説明する。

 

仮に起業家が100人に1人だとする。刑務所に入った経験がある人も100人に1人だとする。これを両方経験している人は、「かけ算」すると1万人に1人ということになる。

 

他にもJリーグアドバイザー、宇宙事業、食べ歩き、大人の映像、などなど。濃淡はあるだろうが、様々な経験をするたびに、「かけ算」を行う。すると、ホリエモンという名前が巨大になっていく。

 

少し回りくどいが、ぼく自身の話をさせてほしい。ぼくは苦労して著作を世に出したことをきっかけに、専業作家を始めた。しかし、思ったよりも稼ぎが悪かった。

 

『多動力』にこんな記述があるが、これはぼくのことである。

 

<作家根性を発揮して言葉の端々までこだわり抜き、1年以上かけて作った本が1万部もいかないなんてことはよくある。印税で言ったら100万円足らずだ。時間をかければクオリティが上がる、真心を込めれば人に伝わるというのは妄想にすぎない。> 書籍版 p.42

 

ぐうの音も出ない。もっとも、自分でも限界を感じていたので、昨年は書店員も始めてみた。当時は『多動力』については知らなかったが、発想としては「かけ算」である。

 

「作家」×「書店員」というのは、それなりにインパクトがあったらしく、多くの人に興味を持って頂けた。その縁の一つによって、このマンガ新聞のレビュアーにも参加させてもらえたわけなので、やはり「かけ算」は効いているようだ。

 

一方で、「かけ算」の対象が、近すぎる上に、肩書きが2つでは、意外性が低い。『多動力』を読んで、もっと面白い肩書きを3つ以上つけるべきだなと感じ入った次第である。

 

このように、ぼくはホリエモンのメソッドを自分に当てはめて検討することが出来た。

 

実はこれこそが『多動力』というプロジェクトの非常に優れたところなのである。

 

ホリエモンは、常人離れしたモンスターなので、誰にも真似することは出来ない。

 

そう思っていたし、世間的にも思われてきたはずだ。良く言うと雲の上の人である。しかしながら、『多動力』では、ホリエモンになる方法に光を当てることに成功している。

 

ホリエモン同様に、好きなことを好き放題やりながら、それをキャリアアップや、人生の幸福度を高めるために使っていくための、具体的なノウハウが紹介されているのだ。

 

親切なことにチェックシートまでついている。

 

『多動力』を読んだ後は、ホリエモンが実に身近な存在に思えるようになる。雲の上ではなく、隣にいる存在として捉えられるようになるのだ。

 

隣にいると言うことは、参照して、活用することが出来るということだ。

 

ホリエモンほどのバイタリティを発揮することは常人には難しいが、趣味の分野だけはホリエモンになるとか、「かけ算」の部分だけビジネスで使ってみるとかいうことは、今日からでもすぐに出来るはずだ。

 

というわけで、誰にとっても『多動力』はお勧めの本である。ただ、書籍版とマンガ版が出版された今、どちらを読むべきかという問題が生じる。最後に、どちらから読むべきなのか私見を示す。

 

書籍版は、著者が熱を込めて自説を展開している。世にある多くの啓発書との違いは、著者が時折不機嫌になることだ。

 

これは、本音を隠さずそのまま伝えているということなので、ぼくは良い印象を持った。取り繕った無難な意見をわざわざお金を出してまで読みたいとは思わないからだ。

 

そして、著者が「気合いを入れて書いた」というだけあって、非常に迫力がある。岡本太郎著『自分の中に毒を持て』という本を読んだときの、異様な緊迫感を思い出した。

 

一方で、書籍版だけでは、ホリエモンメソッドを、どうやって応用したらいいのかわからない人もいるかもしれない。ぼくは特殊な仕事をしているのでそのまま使えたが、会社員の方にはピンと来づらい部分もあるのかもしれない。

 

『マンガで身につく 多動力』は、書籍版で展開されている主張を、会社の中でどう応用するべきかに焦点を絞っている。もっとも、普通の会社ではなく、会社のあったビルが、謎の孤島へとある日突然ワープしてしまう(ファンタジー的展開である)。

 

そして、絶海の孤島にいるのに「社員は通常通り仕事をしろ」という業務命令が下り、みんな渋々業務をはじめる。

 

そんな中、『多動力』にあふれる主人公・堀口靖史は、外に出て、罠を仕掛け始める。食料を手に入れる必要があるからだ。

 

幾分か強引な設定なのだが、その分マンガとしては面白い。異常な状況下で、目を輝かせてワクワクしながら、次々と状況を解決していくことこそ、『多動力』の真骨頂なのである。

 

我々に求められているのは、今いる環境の中で何をどう改善するかではなく、心がワクワクする場所へとワープすることなのかもしれない。

 

『多動力』および『マンガで身につく 多動力』は、能動的かつ楽しく生きていこうと考えるすべての人にお勧めの本である。

 

多動力 (NewsPicks Book)
著者:堀江 貴文
出版社:幻冬舎
販売日:2017-05-27
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マンガで身につく 多動力 (NewsPicks Comic)
著者:堀江 貴文
出版社:幻冬舎コミックス
販売日:2018-03-01
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僕と多動力の日々

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