TOP > マンガ新聞レビュー部 > 事業家・クリエーター必読『7人のシェイクスピア N...

マンガのみならずあらゆる芸術に影響を与えた劇作家、ウィリアム・シェイクスピア。
田舎出身のシェイクスピアがなぜ歴史に残る作品を作り上げたのか――こんな疑問に真正面から応えようとしたのが、ハロルド作石先生の『7人のシェイクスピアNON SANZ DROICT』です。
 
ウィリアム・シェイクスピアは実は7人組のチームだった」という大胆な説が、歴史背景をとともに展開され、熱意に資金と知恵が集まり、歴史に残るものができる瞬間を目撃出来ます。主人公らのセリフに、第一線のマンガ家である作者の思いすら感じ取ってしまいます。
 
 
出身地のストラトフォード・アポン・エイヴォンで、その地で生きていくには難しい試練に直面したランス・カーターことウィリアム・シェイクスピア。自由を得るため、幼馴染のワース・ヒューズ(本名、ジョン・クーム)とともに、ロンドンに向かい、演劇界でのし上がることを目指します。
 
本作は、マンガ新聞が2017年12月に発表した「マンガ新聞大賞2017」では第8位に選ばれました。
 
 
 
『7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT』が面白いのは、歴史上の偉人を取り上げつつも「単なる1人の伝記」ではないこと。
タイトルが示すように7人の能力を持つ人が集まったプロジェクトチームの成功物語が展開されます。
 
※ちなみに「シェイクスピア複数説」は決して突拍子もない話ではありません。文学史の中でも研究されており、ハロルド氏も多くの書籍を参照しています。
 
もちろん「劇作家になってのし上がりたい」という情熱を持つのはランスです。しかしその情熱を具体的な作品へと消化させるのはランス1人の力ではない。
 
例えば、幼馴染のワース。演劇のシナリオなどの良さはわからず、ランスと一緒に、芝居を観に行っても作品より劇場などの収益面に着目するようなキャラクター。
しかし、その商才で、ランスらのロンドンでの生活の基礎となるお金を稼ぎ、その後の生活そのものを支えます。ランスに創作を促すときも、「ロンドンでの生活を支えるために、年間何本の作品を描く必要があるか」を訴えます。
 
事業家やクリエイターの方にとって事業や創作を支える財政面がどんなに大切かは言うまでもないでしょう。
 
創作面での支えは中国人少女のリーや、ロンドンで出会った女性、アンなど。作中ではむしろリーの、多くの人を感動させる詩があったからこそ、ランスは劇作家を目指したと描かれています。
そして、アンはその詩にあった音楽を提供。彼らのほかにも作品のネタを提供する本売り、魅せる展開にするための構成や、舞台設計への助言者などがランスの活動を支えます。
 
では、ランスは何のためにいるのか?
それはチームをまとめ作品を完成に持って行くためのドライバー役としてです。
私たちは史実としてシェイクスピア作品の素晴らしさを知っています。しかし同時代の人、特に興行主からすればヒットするかどうかわからない新人の作品。実際持ち込みを断られたり興行がうまくいかなかったりします。
 
それぞれの能力を生かした作品が、大衆に受けなかったーーそんな厳しい状況でも次の作品を生み出そうとチーム全体を後押しするのはランスの根拠がなさそうにすら見える自信。
 
何かを生み出し、それを世間に認めさせるには、ここまでの自信と胆力が求められるのかと思わされます。
 
 
読めば読むほど「歴史的偉業の達成は、1人の力ではなく複数の人の力や能力がうまくかみ合ったからだ」という想いが強まります。
 
こうして違う能力を持った人が集まり、一つの作品の成功を目指す姿は、実社会で新たなサービスを生み出そうとする事業家や起業家の姿に重なるもの。新サービスの開発や事業の立ち上げでも参考になる考え方でしょう。
 
こうしたメッセージを、編集者やアシスタントらとともに作品を作り上げるマンガ家が描いているため、キャラクターのセリフや行動にマンガ家の想いが反映されているように感じられて仕方ありません。ランス自身も傑作を描く心構えとして、「キャラクターに自分自身を込めなければならない」といった趣旨の発言をしています。
 
作中の時代では、宿屋の中庭などで芝居が上演され、庶民の娯楽として高い人気を誇りました。それは『7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT』で描かれているように、その裏に劇作家らの姿が反映されていたからだと思われます。いま、庶民の娯楽の一角を担うマンガも同様ではないでしょうか。
架空の作り物語を描いていても、ちらちらと見え隠れする作者の思いや考え方。キャラクターや物語展開だけでなく、生身の人間が感じられることも、マンガを読む楽しみのひとつとでしょう。

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