TOP > マンガ新聞レビュー部 > 【祝2回目のアニメ化】頭脳戦、サイキョーではない主...

 2018年1月に始まったアニメ「覇穹 封神演義」。アニメ化をきっかけに藤崎竜さんの原作マンガ『封神演義』を読んだところ、やっぱり面白い。決してサイキョーではない主人公、頭脳戦、シリアスとギャグのバランスと、古びれない魅力があります。「もうこれが”正史”でいいのでは」とすら思わされる、絶妙な翻案力に引き込まれます。

 

 子供のころに読んだ昔のマンガを読み直すと、「なぜこの作品を面白いと感じたのだろう」「なぜこの絵が好きだったのだろう」と感じることがあります。でも封神演義はまったくそんなことを思わず。きっと、今リアルタイムで連載していても私は「これ、面白いよ」と周りの人にオススメすると思います。それはなぜなのか、古びない面白さはどこにあるのかを考えてみました。

 

封神演義 (第1部) (ジャンプ・コミックス)
著者:藤崎 竜
出版社:集英社
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 一、「主人公=最強キャラ」ではない
 

 封神演義で、人や仙人を神に封じていく「封神計画」の中心であり、作品の主人公は太公望です。歴史上では、中国の周王朝の建国の立役者として知られています。「なるほどさぞかしすごい人なのだろう」と思われるでしょうが、少なくとも「マンガ・封神演義」のなかでは必ずしもパワー面での最強キャラクターではありません。


 仙人の戦う力でいえば、太公望の師匠である元始天尊、天才といわれ、四不象から「主人公っぽい」とされる楊戩、熱血の燃燈道人など、太公望よりパワー面で「強い」とされるキャラは大勢登場します。むしろ太公望は、地面を這うなど一般的に「カッコワルイ」とされるシーンが目立つ。仲間のキャラからも「悪役っスね」と言われてしまう。

 

 封神演義の連載開始は1996年。当時ジャンプでは『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』『ろくでなしBLUES』『ダイの大冒険』が連載されていました。これらの作品の主人公と比べても、太公望は特に肉体面で「強い」とはいえないのではないでしょうか。


 作品中でも戦いが佳境になると太公望は元始天尊に「もっと強い武器をくれ!!」とねだるシーンがあります。多くの場合、パワーアップアイテムは、主人公の努力によって得られるもの。こんなことをするジャンプの主人公は少ないかもしれません。

 ※もちろん、最後の勝負など決めるところでは決めてくれるます。策士として、参謀として力強いことは間違いありません。

 

二、勝利のために力とアタマを使う
 

 上記とも関連しますが、太公望含め、封神演義のキャラは勝利のための力だけでなくアタマも使う。ここは史実の名参謀の名にふさわしいところ。妲己からも太公望は「策士」と認められます。『DEATH NOTE』とともに、パワー勝負が中心だった、ジャンプカルチャーに頭脳戦を本格的に持ち込んだ作品のひとつだと思います。

 ただ、このアタマの使い方、「敵の甘言に揺らいだふりをみせて襲ってきたところを倒す」など、読者が「おおっ」と関心することもあります。が、全体と通してみると、ややずるいともいえる、搦め手の方が目立つ。個人的にはここが、単なる頭脳戦マンガとは違う面白さがあると思います。

 

三、ギャグとシリアスのいいバランス

 封神演義の舞台は、中国古代。殷から周に王朝が変わる時代を描いたものです。仙人、妲己によって惑わされ国を傾けた殷の紂王を倒し、新たな王朝、周を作る過程で、人間界を乱す仙人や人間を神に封じる「封神計画」を進めていくものです。多くの人間や仙人が命を落とすなかで新たな王朝を築いていくというシビアなストーリー。仙人らが宝貝を駆使し、死闘を繰り広げる、太公望の失策で同じ民族の人々が殺される、味方になると思われた紂王の皇子が敵になる――など。真剣に読むと、一つの王朝ができる過程の厳しさが感じられます。


 が、そのなかでも余裕を維持しようとする太公望。一対一の肉体戦に挑むとき、武器は酒がしみ込んだ仙桃。それを食べて、みごとな酔拳を披露する。太公望と霊獣、四不象のボケとツッコミ。シリアスな展開でぐっと力が入っていくと、太公望のゆるゆるした動きが紙面上に現れ、いつの間にか力を抜いて読み続けることができます。もちろん、やわらかい線で描かれた絵、突如コマ割りが4コマ漫画になるなどの自由奔放な藤崎さんの描き方もシリアスな歴史物語の緩衝剤になっていると思います。

 

四、「敵キャラ」が魅力的
 

 封神演義においてひとまずの最大の敵キャラとされるのは、殷王朝の皇后、妲己です。史実では世界悪女の一人とされます。マンガ・封神演義のなかでは、力のある仙人で武器である宝貝も複数操ります。そして策士とされる太公望以上の策士。ほかの王妃を死に追いやったり、有名な「人肉ハンバーグ」を作ったり、ひどいことをするのですが、かわいいらしく魅力的。妲己以外にも、妲己の妹の胡喜媚、王天君など印象的なキャラクターが多く登場します。

 このキャラクターのかっこよさは、藤崎さんのスタイリッシュなデザイン、絶妙な色使いも貢献していると思います。

 

 実はマンガの封神演義には原作があります、小説『封神演義』(安能務訳)がそれ。小説の前書きで安能さんは、封神演義を「中国の三大怪奇小説のひとつ」と指摘。実は小説の展開は、マンガ・封神演義とまったく違うもの。でもそれぞれが面白い。

 

 これは完全に私見なのですが、小説もマンガも面白いと思えたことで、マンガ・封神演義は「マンガ作品そのものだけでなくメディアミックスとしても最高」と思いました。

 今、多くの作品でマンガがアニメになり、アニメがマンガになり。ゲームがアニメやマンガになるなど、コンテンツはあらゆる媒体をいったりきたりしています。これ自体はけして新しい話ではないのですが、うまくいったりいかなかったり。

 そういう観点で考えると、マンガ・封神演義は巧みなメディアミックス。ただほかのメディアでやるというだけでなく、マンガ家が物語を読み込み、自分の物語として消化。そこに描いた人の個性がのせられ、藤崎版封神演技といえるようになっている。小説のさらにコミカライズですが「もうこれが”正史”でいいのでは?とすら」思えてくる翻案力です。


 封神演義のアニメ化は1999年に続き2回目です。今回のアニメの第1話では、主人公の太公望が元始天尊から封神計画を任され、ラスボスの一人、妲己を倒すため、紂王の誘拐を計画。しかし妲己に阻まれ、のちに味方となる武成王に助けられ、なんとか都を抜け出し、味方を作りに西へ向かいました。

 ※なお、1980年代生まれの私は、封神演義のアニメ化が決まったと発表された瞬間、ほかのファンの方と同じように「いったい今は何年だ・・・」と戸惑いました。

 先が気になる人、アニメを見た人で「ちょっと展開が早いな~」と思った人はスキマの物語を埋めるためにも、ぜひコミックスを読んでほしいです。今なら「ジャンプ+」で一部無料公開中です!!

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