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八犬伝は何度でも蘇る『里見☆八犬伝REBOOT』

1・リメイクのリブート

 

『里見☆八犬伝』という漫画をご存知でしょうか?

90年代の終わりから2000年代の初頭にかけて

『月刊少年ガンガン』で連載されていた人気漫画です。

 

 

 

 

名前の通り、曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』をモチーフとしていますが、まずはその『南総里見八犬伝』について軽くおさらいしておきます。

 

時は室町時代。

領主・里見義実が、敵将の首を取ってきたら娘を嫁にやる飼い犬の八房に約束します。

 

するとホントに敵将の首を取ってきたので、娘の伏姫は犬に嫁入りすることになりました。

実は、八房には義実が約束をたがえて殺した玉梓という女の怨念が憑いていましたが、日々の読経の功徳で怨念は晴れます。

 

そして、伏姫から生まれた八つの玉が飛散し、

その玉を受けた八人が、後の八犬士というわけです。

 

どうでしょうか?

もうこのあらすじだけでも、めちゃくちゃ面白そうでしょ?

実際、現代のさまざまな作品に影響を与えていたり、

多数のリメイク作品を生み出しています。

 

それらリメイクやオマージュ作品の中でも異彩を放っていたのが

この『里見☆八犬伝』です。

大胆なアレンジがなされた物語やキャラクターによるスラップスティックで軽妙な和風ファンタジーの本作は、大きな人気を博すことになります。

 

さて、そんな『里見☆八犬伝』ですが、諸事情あって途中で終了します。

続きが描かれたこともありますが、それも途中で停止していました。

 

それが、2015年にセルフリメイクという形で復活したのです。

今回紹介する、『里見☆八犬伝REBOOT』です。

 

もともとが『南総里見八犬伝』のリメイクと言える作品ですから、リメイクのリブートと言えるかもしれませんね。

 

2・大胆な翻案

 

『里見☆八犬伝』は魅力がありすぎるほどのキャラクターたちが大人気でした。

前述したように、『南総里見八犬伝』の登場人物をアレンジしたキャラクターたちです。

 

リブート版においても、そのキャラクターたちは健在で、一部はより濃い存在として生まれ変わっています。

その濃いキャラクターたちを何人か紹介したいと思います。

 

まずは、なんと言っても主人公の犬塚信乃(しの)。

名前からわかるかもしれませんが女性です。

ですが、原作では男性です。

 

ただ、原作では、母が女性名をつけて女装させ育てたという設定があり、その大胆な翻案と言えます。

 

原作から性別を入れ替えた女性主人公は、

現在でこそ珍しくありませんが、90年代後半では稀でした。

 

ある意味、『水滸伝』の登場人物の大半を女性に翻案した『傾城水滸伝』を書いた馬琴の精神に最も近いかもしれません。

 

ところで、この信乃は周りからは男性だと思われています。

隠しているわけではなく、そう思われているだけなので男扱いされては「私は女だ!」と大暴れするのがお約束。

 

大幅な翻案と言えば、犬山道節

原作では、毒殺されたあと墓の中で蘇ったという人物のためか、

本作では完全にサイボーグです。

本人は忍者と言い張っていますが、どう見てもサイボーグです。

大事なことなので二回書きました。

 

彼らは原作からは大きくアレンジされていますが、

旧作からは比較的変わらないキャラクターと言えます。

 

一方で、大きく変わったキャラクターが犬田小文吾です。

旧作では純朴な好青年といった比較的地味な人物でしたが、

その特徴はそのままに、長髪の大男という存在感バリバリのキャラクターとなっており、

以前を知る人ほど度肝を抜かれるでしょう。

 

そんな信乃たちを始め、個性豊かなキャラクターたちが多数登場し、

時にシリアスに、時にスラップスティックに展開する物語が本作の大きな魅力となっています。

 

3・原作・旧作・新作

 

と、ここで、「旧作や原作を読まないと楽しめないのか?」

思った方もいるかもしれません。

旧作や原作を知らなくても、全然大丈夫です

 

そもそも原作は全96巻の大作であり、

研究者以外で全部読んだ人はほとんどいません

それでも、歌舞伎や映画、TVドラマとして知る人は多いでしょう。

 

昨今のほとんどの『南総里見八犬伝』のリメイク作品での

ラスボス・玉梓も、原作では最序盤に成仏します。

これは、70年代NHKの人形劇『新八犬伝』の影響と考えられます。

 

つまり、『南総里見八犬伝』は翻案され、

形を変えることで楽しまれ続けてきた作品と言えます。

だから全然大丈夫!

原作と異なる点を楽しむもよし、旧作と異なる点を楽しむもよし、

全く知らずにイチから楽しむもよし!

そうやって楽しまれてきたのが『南総里見八犬伝』です。

 

というわけで、現代の『南総里見八犬伝』たる

『里見☆八犬伝REBOOT』を読みましょう!

とびきり濃厚な八犬伝です!